第3章 チョロシコスキーと呼ばないで
あれから、僕たちはどちらからともなくスタバァで会うようになっていた。
ぼくは彼女に会いたい一心で、気がつくと、外出した帰りは大抵スタバァに寄るのが習慣になってしまい…。
もちろん、今日も来るかなぁなんて淡い期待を抱いては、無駄に終わる日もあったけれど。
どうやら今日は、落胆することは無いみたいだ。
主「あっ、チョロ松くん!」
僕を見つけ、手を振る主ちゃん。
僕も手を振り返し、注文を終えて彼女の隣に座った。カウンター席の奥は大抵空いているので、会えた日はそこで過ごすのがほとんどである。
2人の会話は、大体いつも僕が聞き役だ。おしゃべりな主ちゃんは、楽しそうに今日あったこと、好きな食べ物の話など、他愛もないことを僕に話してくれる。おかげさまで僕の方も、彼女と話すのに大分慣れてきていた。
そんなある日。
主「そういえば、チョロ松くんって仕事は何やってるの?」
チ「!!」
チ(つ、ついにきたか!仕事の話…!どうする…どうする!?)
チ「あ、あの…えーと…」
全身から汗が噴き出してくる。
主「この間、タウンワーキング取ろうとしていたし、もしかして…」
チ「と…父さんの」
主「?」
チ「父さんの知り合いの会社、今度紹介してもらうんだ…。だから、それまでは…まだ…」
まだというか、ずっと無職だったが、嘘はついていない。最近父さんに話を持ちかけられ、悩んでいるところだった。
すると、主ちゃんはニッコリと微笑む。
主「そうなんだっ!おめでとう!!」
チ「ありがとう…!でも、まだ具体的な話には進んでないよ」
主「でも、お父さんの知り合いなら、何となく安心だねっ。…実は、わたしも…」
チ「えっ?もしかして…!」
主「うんっ!この間面接に行った会社、無事に採用されましたっ!!」
チ「ハハッ!すごいよ!おめでとう!!」
僕は心から主ちゃんを祝福した。少し後ろめたさはあったけど、仕事が決まらなくてずっと悩んでいた彼女の努力が報われたんだ。素晴らしいことじゃないか!