第3章 チョロシコスキーと呼ばないで
すると…
チ(ああクソっ、新品だからページめくりづらっ!ここはスマートに決めたいのに…!)
苛立ちで手元が狂い、本が手から滑る。
チ(あ、まずい!)
本の角がぶつかりコーヒーがぐらつく。
ぼくが慌ててコーヒーに手を添えると、
そこには彼女の手があった。
チ、主「!!」
急いで手を離す。
チ「あっ、すみません!」
主「わ、わたしこそごめんなさいっ!」
チ(まさかの3度目のキセキーッ!!恋のハットトリック!!恋のMVPー!!)
主「あの、もしかして…さっきコンビニで会った人…ですよね?」
チ「えっ?あ、あーそういえばそうですねっ!全然気がつきませんでした!」
チ(いえ、嘘です…ずっと意識ビンビンでしたー!つ、ついに向こうから話しかけてくれた…!!)
主「わたしもはじめは気がつかなくて。すごくびっくりしちゃいました!」
チ「こんな偶然、あ、あるんですね!」
緊張からか、話し方がカタコトになってしまっている。
主「本当に驚いちゃいますよねっ!さっきは、その…ありがとうございました。」
チ「いや、あんなの別に…大したことじゃないですよ…。」
主「でも…なんていうか、落ち込んでる時って、些細なことでも優しくされるとホッとしません?だから、わたしあの時嬉しかったんです。」
チ(こ、これは…一歩踏み込んで悩み事を聞いた方がいいパターンなの…かな?いや、自分からは聞くのやめよう…。気持ち悪がられたら嫌だし…。)
チ「ハハッ、誰だって落ち込む事くらいありますよ。少しでも元気が出たならよかったです。じゃあ、僕はそろそろ帰るので…また…。」
主「また…?」
チ「あっ!?」
チ(ヤバイッ!!つい「また」なんて言っちゃった…!偶然会っただけなのに…!)
リュックを片手に立ち上がった後、恐る恐る彼女の顔を見ると…
主「ハイッ!また!」
ニコッと微笑み小さく手を振ってくれたのだった。
マトモに女子と話す事なんてなかった僕が、女の子と出会い、会話をして、手に触れただなんて…!
この日は興奮してろくに眠れなかったのは言うまでもない…。