第3章 チョロシコスキーと呼ばないで
チョロ松視点
ぼくは1人、スタバァにきている。
トド松がバイトを辞めてから、兄弟には内緒で時々訪れるようになっていた。
うるさい兄弟達から離れ、自分を見つめる時間は必要不可欠なのだ。
飲み物は、正直頼み方が分からないので、いつもオススメを貰うようにしている。
コロンビアだとか、オーガニックだとか説明されるが、ぶっちゃけよく分からない。
うん、分からないけれど、なんかその響きが好き。
そんなぼくの隣に、女の子が座った。
それはなんと…!
今日、コンビニでタウンワーキングを取ろうとした時に出会った女の子!
一冊しかなかったけど、とても僕の好みにリンクした子だったので、彼女にそれを譲ったのだ。そして、帰る前に一息つこうと駅前のスタバァに足を運んだのである。
席に着き、コーヒーを飲みながら夕飯なんだろうなんて考えてたら隣にまたその女の子。
なんかいいシャンプー使ってます、って感じの女の子。
だって…
チ(はーん!!めちゃめちゃいい匂いー!!なんだこの至近距離っ!混んでいてくれてありがとーう!!)
しかし、女の子はこちらに気づいた様子は無い。
チ(あー同じ空間で呼吸出来るだけでシアワセッ!!もう全部カワイイ!全部好きー!!)
心の声が顔に出ぬよう、ぼくは努めて無表情を決め込んだ。
自覚はしてるけど、DTを拗らせるとほんの些細な接点でもよこしまなスイッチが入ってしまうんだ。わかってる、わかってるけどさ…
チ(同じ日に二回も会うのはさすがに意識せざるを得ないって!!あーこっち気づかないかなぁ!?それで話しかけて来てくれないかなぁ!!え?いやいや、自分からは絶っ対ムリッ!リスク高すぎっ!!)
一体誰に向けた心の声だよ、と自分自身にツッコミを入れそうになった時、閃いた。
チ(そうだ!読書したらこっちをチラ見してくれるかも!そうすればきっと気づいてくれる!)
早速、リュックから本を取り出す。
チ(スタバァ用に持ってきた、この、いかにも意識高い系な本を読んでいる姿を見れば、彼女も話しかけずにはいられまい!こわい、うまくいく気しかしない!自分がこわいよぉぉぉお!)
そんなこんなで意気込んで本を開き、わざと題名が彼女に見えるように立てて読んだ。