第2章 恋の迷い子カラ松
主(うぅ…なんでこんなヘンテコな人に助けられちゃったんだろ…)
呼び止められたので、無視するわけにもいかず、ため息を吐きつつ振り返る。
主「何ですか?急いでるんですけど」
カ「どうやら草むらで探し物をしてたようだが、何を探してたんだ?」
主「あなたには関係のないことなので」
カ「関係なくは無いだろう?夕暮れ時のあんな場所に1人でいる女の子を見かけたら、誰だって心配する」
主(あれ?何だかマトモな発言…)
さっきまで意味不明な会話がほとんどだったのに、今の松野さんは至って普通だ。
主「…飼い猫です。ミウっていう黒猫なんですけど、もう3日も帰ってきてなくて」
自分で探せるところは探し尽くしたのに見つからなかった。自宅周辺、保健所、赤塚駅、商店街、公園、そしてこの川辺…。松野さんに話した途端、弱気な自分が顔を出し、心細くなる。
主「元気ならいいけど、お腹空いて動けないのかもしれないし、もし事故に遭ってたら…。まだ子猫なんです。早く見つけてあげないと!」
カ「そうか、それは大変だな。主も辛かっただろう。だが、今日はもう遅いから、切り上げてまた明日探した方がいい。よければ子猫ちゃんの写真を見せてくれないか?」
主「は、はい。この子です…」
予想外のマトモさに、写真を見せてしまっている自分がいた。
それが、間違いだった。
カ「フッ、OKだっ!悪いが、この写真はしばらく預かるぞっ!」
主「えっ?あの、ちょっと!!」
カ「また会おうっ!カラ松ガールッ!!」
珍妙な捨て台詞を吐きながら、松野さんは夕闇の中に消えて行った。