第2章 恋の迷い子カラ松
主人公視点
河川敷に来てから随分と時間が経ち、辺りはすっかり暗くなっていた。
カ「フッ、待たせたな…」
公衆トイレから、手を洗ってさっき出会った不思議な人は出てきた。出てきた…けど…。
主「あの…なんで髪の毛濡れてるんですか?汚れたの手だけだったと思うんですけど…」
なぜか黒髪からポタポタと雫が垂れている。
主(カッコつけてるつもりなのかな…?全然そんな事ないけど。むしろ、きもちわるいけど)
頭には青いスパンコールが大量に散りばめられ、タオルとしての役目を全く果たさなそうな布を被っている。書いてある文字を見ると…
主(カラ松GREAT?アーティストか何かかな?聞いたことないや…)
先ほどの問いに返事はなく、片方の口角を吊り上げ笑みを向けてくるだけなので、それ以上詮索するのはやめた…。
主「その、さっきはありがとうございました。犬のフンの場所を教えてくれようとしていたのに、叩いちゃってごめんなさい。これからはあの草むらに近づかないようにします。じゃあ、わたしは用事があるので」
ぺこりと頭を下げ、その場から立ち去ろうとすると呼び止められる。
カ「ま、待ってくれ!キミの名前を教えてほしい!」
主「名前ですか?you 主です。えっと、あなたは?」
カ「主…なんてスウィートな響きなんだ。これからは名前で呼ぶとしよう。俺か?俺は松野カラ松…空虚な時間を彷徨っていたところに、キミという一筋の光が差し」
主「松野さん。では、失礼します」
クルリと背を向け逃げるようにその場を去る。
主(ダメだ!関わっちゃいけないタイプの人だ!)
発言のイタさにも戦慄を覚えていたが、タオルの本名が一番堪えた。
カ「待ってーー!まだ聞きたいことがー!」