第12章 デート編 おまえら一体何なんだ!? トド松
「こんなラブホテルはいやだー」
(うわクッソさむいの始まった…)
新品の一松兄さんは、淡々とした口調で画用紙をめくる。
それを見守る新品松兄さんたち。
って、さっきから新品新品ってシツコイよね。
長ったらしくて語呂が悪くて疲れんだよ。
「…鏡張りの部屋で見知らぬ指紋」
「えっ?」
(あぁぁあーしょっぱなから滑りまくってるよぉぉお!もーやめなってぇぇえ!)
主ちゃんは、頭に"?"を浮かべながら画用紙に目を向けている。
「…ベッドは高級なのにトイレは和式」
新品の一松兄さんの隣に並ぶ三人が吹き出し、肩を震わせ笑い出す。
ひとっつも面白くないんだけど。
主ちゃんついに無表情だよ。
思考を停止させちゃったよ。
寒い上に身内しか笑わないネタとか、クラスの人気者で調子に乗ってて、卒業後なんかの新歓でダダ滑りするタイプと同レベルだから。
「…野菜が散らばっている」
「生々しいのやめてくれる!?」
堪えきれずツッコミを入れてしまった瞬間、一組のカップルがボクらの間を通過した。
その時。
「備え付けのコ…ッ」
新品の一松兄さんの声が止まり、他の新品達は何くわぬ様子でそっぽを向いた。
怒りのゲージがまた一つ増える。
「ねぇ…何が『人々にラブホの恐ろしさを伝える』だよ。妨害すんのボクら限定かよ!?」
「だって、なぁ?」
新品の青が黄色と赤にコソコソと耳打ちしている。
頷く二人。
「ラブホこわい!!」
「愛を深め合う一般人を、妬みこそすれ妨害するとか人としてどうなの?」
「いや兄としてどーなの!?」
新品の赤が握り拳を胸の前で作り声を荒げる。
「いい加減目を覚ませ少年!!そもそもキミは我々側というか、まんま我々と同レベルの圧倒的最底辺だったじゃないか!」
「……夕日に誓ったでしょ?上の人間を我々側へほんのちょっぴり引きずり下ろし、ほくそ笑むって…」
「そんな悲しい誓い誰が立てるかっ!」
やめて新品の紫。
正確には賛同してただけで夕日には誓ってないし、そもそも隙あらばボクだけのし上がり脱退する気満々だったからね。
てかさっきから主ちゃんの前で何言ってくれちゃってんの?
とりあえずはここから離れるのが得策か…。