第12章 デート編 おまえら一体何なんだ!? トド松
ラブホに辿り着くと、入り口前はトンデモナイことになっていた。
「なんなのこれ!?」
「み、みんなスゴイね…」
何組ものカップルが、ラブホの前で抱き合い愛を囁き合っている。
みんな二人の世界に浸り、周りがまるで見えていない。
ボクは思わぬ事態に呆然と立ち尽くす。
(これが…リア充という生き物なのか!?)
ラブホに突入する前、「えーーっ、でもぉ、恥ずかスィーーイ」、「バッカお前、今更なに言っちゃってんのーー?寝かせねぇっつったじゃあぁぁあん?」、「やさしくしてくんなきゃやーだー」、「ああ?奥歯ガタガタ言わせてやんよー」というやり取りを延々と繰り返し、互いのテンションを高め合っている。
ボクらもさっきこーゆー雰囲気にはなったけど、こんなあからさまに人目につくとこではやってない。
早く部屋入れという話だが、彼らはきっと一人でも多くの人に見られたいんだ。
明日壊れるかもしれない脆い絆を、これでもかってくらい見せつけたいだけなんだ!
なんてこった。
ここはまるで虚飾の都。
「く…っ」
「トッティ!?」
ボクは奴らの威圧感に怖気付き、がくりと片膝をついてしまった。
軽はずみにリア充の巣窟に足を運んでしまったことを、今更ながらに悔いる。
だってぇ、ボクぅ、心配になってきちゃった。
よくよく考えれば、おっぱいすら触ったことなかった。
まだチューしかしてないし。
ボク大丈夫かな…ちゃんとエッチ出来るのかな。
主ちゃんに気持ちよくなってもらえるといいんだけど…。
頭の中でぐるぐると不安が渦巻いていると、主ちゃんがしゃがんでボクを覗き込んできた。
「疲れたなら早く行こう?わたしはあーゆーの恥ずかしいから、部屋でのんびりしたいな?」
「DA・YO・NE☆ボクもそう思ってたとこー!」
えっへへ、ボクってば何を考えてんだろう。
周りなんて関係ないよね!
二人さえよければいいんだから!
変に気負わずラブラブナイトを楽しめばいいんだよね!
主ちゃんに背中を支えられながら立ち上がる。
よし、今夜は盛大に楽しむぞーっ!
「早まるな少年!!」
……———ん?
「ト、トッティ…なんか、白い人がこっちに向かって話しかけてきてるよ?」
…ボクの唇から、深く重いため息がこぼれ落ちた。