第11章 デート編 十四松の夏
一瞬、時が止まったかと思った。
なんてかわいいんだろう。
見つめれば、主ちゃんの目にも同じ景色が映っている。
「主ちゃん…どうしよう。ぼく…」
「なあに?十四松くん」
なんか、なんかね、ドキドキが止まらないんだ。
こうして手を繋いでいるだけじゃダメなんだ。
全身が熱い。
身体中の細胞レベルのちっさいぼくが主ちゃんと…。
主ちゃんとね。
「すっげーチューしたいですっ!!!」
至近距離にいるのにも関わらず、思わず大声で叫んでいた。
「う、うん…わたしも」
ごめんね主ちゃん。
耳ビリビリ痛かったよね?
それなのに、痛がる素振りも見せず彼女は真っ直ぐぼくを見ている。
瞳の中の茜色はぼくを吸い込んでしまいそう。
ぼくは、桜貝を壊さないようそうっと握りしめた。
——そして。
人気のない夕暮れの砂浜。
主ちゃんの身体を抱き寄せて、
「大好きだよ」
「わたしも大好き」
はじめてのチューをした。