第11章 デート編 十四松の夏
主ちゃんは手を繋いだまま上体だけ起こし、伸ばした足の指先で砂をいじって遊んでいる。
「楽団員になったから、こうして二人で遊べる時間が今より減っちゃうんだ」
「えーー?」
「休みの日も、吹奏楽指導の仕事が入ったら行かなきゃだし」
「そーなんだ!」
そうだよね。
きっと忙しいよね。
休みの日も、ぼくと遊ぶより寝まくった方がいいと思うな。
遊んだらクタクタになっちゃうから。
「それでも、これからもわたしと一緒にいてくれる?」
なんで当たり前のことを聞くのかなー?
うーん。
そっかぁ。
きっと心配なんだ。
「ぼくもがんばるよ」
「がんばる?」
「会えなくてもがんばる。だから、ずっとずっと一緒!」
起き上がった時、手の横でなんかがキラリと光った。
手で砂を掻き分け出てきたのは…
「主ちゃん!!見て見てー!」
「わーかわいい!桜貝だね!」
ピンク色の小さな貝殻が二枚。
拾い上げると手のひらの上、夕陽を浴びてキラキラしてる。
これ桜貝って言うんだ。
ホントに桜の花びらみたい。
「お近づきの印にどーぞー!!」
二枚あげたのに、受け取ってくれたのはたったの一枚。
「一つでいいのー?」
「十四松くん、こういうのはお揃いにしてお守りにするんだよ」
「なんでー?」
理由を聞くと困ったように笑っている。
「なんでだろう?離れてても一緒にいる気持ちになるから…かな」
そう言って、ぼくの肩にキミはこてんと頭を乗せた。