第11章 デート編 十四松の夏
落ち込んでるかと思いチラッと顔を見ると、いつもの笑顔でハンバーグを食べている。
「ま、また試合呼ばれるといいね?」
「うーん、もういいやー」
「なんで?」
身体中についたごはん粒を取ってあげながら尋ねると、口の前まで持って行かれた卵焼きがピタリと止まった。
「ぼくのせいで負けちゃったし」
「十四松くん…」
やっぱり気にしているようだ。
「元気だして。失敗は誰にでもあるよ」
「げんきだよー!お弁当うまくてげんきげんきー!!」
「わ、分かったから踊り出さないで!」
「あいっ!」
踊りが止まり、卵焼きを口の中へ放り込んでいる。
言えばやめてくれるらしい。
心優しい十四松くん。
きっと、落ち込んでいるのを見せて心配かけないよう、必要以上に元気をアピールしているんだ。
(試合を忘れさせてあげるために、河川敷から離れた方がいいかな?)
考えてみれば、いつも会うのは河川敷。
デートらしいデートをしたことが無い。
「ね、十四松くんっ」
「なーにー?」
トマトをパクッと口に入れて小首を傾げている。
「たまには河川敷から出てデートしない?」
「ホントー!?野球すんのー?」
「野球さっきしたでしょ」
「ボゥエッ!!」
十四松くんって何気に筋肉ついてるしなぁ。
身体を動かすのが好きなら…
「暑いから海行きたいな」
きっと喜んでくれるはず。
ウキウキしながら返事を待っていると、十四松くんはお弁当をベンチに置いてバットを持ち、
「タッティー!!」
太腿でバットを挟んで両手を広げるという、よく分からないポーズを取り始めた。
「ええと、それはOKという意味で捉えて良いのかな?」
「モチのロンッ!!」
(古いよ十四松くん…)
こうして、一旦解散して水着を準備し、駅集合で海へ行くことになった。