第10章 デート編 一松くんのドキドキデート日和
店員さんに謝り片付けてもらった後、新しいクリームソーダを注文した。
一松くんはショボくれていじけ虫。
おしぼりで口についたクリームを拭いてあげようと手を伸ばすと、パッと奪い取り自分で拭いている。
「炭酸は一気飲みするとむせるよね!分かる分かる!」
明るい声で慰めてみるも、下を向き心なしか寂しそう。
そんな彼を元気にすべく、ショートケーキを一口分フォークに取り、口へ持っていった。
「ね、おいしいよ?食べて?」
「……」
無言のまま、フォークを掴もうとしたので手を引っ込める。
「え?」
なんで?と言いたげな困ったような目つきだ。
わたしは再び彼の口の前へフォークを運んだ。
「わたし達、付き合ってるんだから、これくらいのスキンシップはいいでしょ?」
「主…」
「ダメ?」
「……一回、だけなら」
そう言うと、よほど恥ずかしいのか、一切こちらを向かずに口を開けて待っている。
可愛かったので苺をサービスしてあーんすると、苺に負けないくらい真っ赤になりながらケーキを食べてくれた。
もぐもぐしながら、一松くんの目が爛々と輝き始める。
気だるげな目つきではあるけれど、瞳の奥がキラキラしている。
一松くんも、こんなに生き生きした目になるんだ…!
…苺で。
「うまい」
「ふふっ、よかったね」
気に入ってくれたようだ。
いじけも少しは治ったかな?
「一松くんもちょうだい?」
どうだろう?
応えてくれるだろうか?