第10章 デート編 一松くんのドキドキデート日和
主人公視点
猫神社から出て散歩していたら、一松くんの猫背がさらに猫背になっていった。
…つまりはぐったりし始めたので、暑さから逃れるため二人で喫茶店に入った。
東京の下町にひっそりと佇むこのお店は、まるで魔法がかけられたように時間がゆっくりと流れている。
わたしはアイスティーとショートケーキ、一松くんはクリームソーダを注文した。
「あれ、一松くん」
「…なに?」
「クリームソーダ、ストローが二つ付いてるよ?」
「……」
お店の人が間違えたのだろうか。
しかも、ハートの形になって絡み合っている。
(こ、これは…もしかして……)
一松くんは、クリームソーダをテーブルの中央に置き、もの凄く吸いづらそうにしながらチューチュー飲んでいる。
そして、こちらを一度だけチラ見すると、頬杖を付きながら隣のおばあちゃん四人の歓談を見始めた。
いや、たぶん見てはいないよね?
見てるフリだよね?
彼女であるわたしより、おばあちゃんが気になるなんて事ないよね?
面白いくらい耳まで赤くなってるし。
エアコン効いてるのに、紫のTシャツは汗で雫が今にも垂れそうになってるし。
…察してってコト、だよね?