第1章 おそ松な彼氏
お「いやぁ、それはそっちが悪いんでしょ?おれむしろ被害者だし。それに、か弱い女の子を怖がらせちゃダメよー」
おそ松くんは、ニーッと挑発的な笑みを浮かべている。
男「このヤローッ!っるせーっ!!」
男が殴りかかってきた刹那、
お「逃げるぞ!こっち!」
主「キャッ!」
手を引かれ走り出すと、顔の横に行き場を無くした拳がかすめた。
男「チッ!クソがっ!!」
男が追いかけてくる。
お「走らせちゃってゴメンなッ!なんとかして巻くぞ!」
頷き彼の手を強く握りしめた。
怖いからなのか走っているからなのか、心臓がバクバク激しく鼓動する。
おそ松くんは、路地を出たり入ったり、あちこち走り回ったかと思ったら、急にピタッと止まった。
お「主ちゃん、この自販機の後ろに隙間がある。ここに隠れよう!」
主「う、うんっ!」
正直体力の限界だったのでホッとした。
足もヒールだったので擦れて出血していた。
おそ松くんに抱きよせられ隙間に入り込むと、身体が密着する。
主「ちょっと…苦しいかも…」
お「少しの間だから、ガマンしてね」
主「そうだよね…がんばる!」
お「…」
主「…」
主(おそ松くんって、けっこう男らしい所ある…かも…。一緒にいると、安心するというか…)
主「おそ松くん…」
耳元でそっと話しかけると、目線だけこちらに向けてくれた。
お「なーに?まだ怖い?」
主「平気。その…ありがとうね。わたしのこと守ってくれて…」
お「まぁ、本当はあいつをぶん殴って倒せたら、1番ヒーローっぽいんだけどね…。生憎とそんな拳を持ち合わせておりません。…カッコ悪い?」
自信なさげな表情が何故かとても可愛かった。
主「そんな事ないっ!カッコよくて、すごく…頼りになる!」
お「なっ!?」
主「ん?」
何かおへその下辺りにぶつかっているような気がする。
固い何か。
位置的に思い当たるのは。
主(これって…もしかして!?)
わたしが動揺していると、おそ松くんが気まずそうに話しだした。