第6章 事件現場
「止せ!其処までだ!」
無邪気さを忘れて無表情のままに男を見据えているアリスを福沢が制止する。
「何もしてないよ?何してると思うの?」
「酸素濃度を下げているのか。症状が呼吸困難のようだね。」
「!」
乱歩に見破られてアリスは空気を操る事を止めた。
「矢っ張り乱歩兄、頭いいねー。」
男が必死に呼吸する様を見て、福沢も安堵の息を漏らす。
「僕に解けない謎なんか無いからね!」
「本当に凄い洞察力だよー!真逆、情報屋の事もバレちゃうとは。」
「そう言えば、先刻僕の推理が違うって言わなかったっけ?」
「嗚呼、そうそう!」
漸く、先程迄の少女に戻ったようである。
福沢は黙って2人のやり取りを見ることにした。
「昨日は不正を調べて欲しいって言われたから調べてあげたのに、私の姿を見るなり掌を返してね?」
「成程。そして大事に隠していた不正の証拠を掴まれて、慌てて取引の様子を見に来ていた連中も、アリスを始末しようとして、君が返り討ちにした。」
「大正解ー。」
「僕の『超推理』は世界最高の能力だからね!」
「異能力者じゃないのに凄いねー!」
「………。」
「あれ?如何したの?」
首を傾げて乱歩に尋ねるアリス。言葉を失っている乱歩の代わりに福沢が質問する。
「何故、其れを?」
「えっと。『異能力―――超推理』って言ったから?」
「答えになってないよ!僕は異能力者だ!」
乱歩が大声でアリスに向かって叫ぶ。
「私、嘘が判るから。」
「!然らば、殺人事件の犯人も判るのは容易な状況だった筈。巻き込まれる事なく済んだのでは。」
「嘘が判っても、証拠や根拠がないなら如何しようもないよ。『私は嘘が判ります。だから貴方が犯人です』って言って信じる人いる?」
「……。」
「戯れ言扱いされて終わりだよ。」
「確かに。否定はせん。」
「其れに加えて私の場合は、容姿も幼いから見下されたり馬鹿にされたりすることの方が多いんだ。」
はあ。と溜め息を着く。
「嘘を見抜くのは別に故意にしてる訳ではないんだ。だから気に障ったならゴメンね?」