第6章 事件現場
「もっと上だと思ってたよ!」
「えっ!」
乱歩の言葉に今度はアリスが驚く番。
警察官も驚いているが自分と反対の意見を乱歩が述べた為、黙って聞いている。
「だって、こんな状況なのに落ち着いるし、相手に何を言われても間を置かずに返答できる。頭の回転が早い証拠だ。其れに、一目見ただけで警戒すべき人物を的確に判断している。」
乱歩が一気に喋る。
警察官は驚きのあまり、口が開いたままだ。
2人が現れたときに警戒したことまでバレているとは。
乱歩の洞察力に、恐怖と更なる警戒心を抱く。
「そんな事初めて言われたよ。」
ニッコリ笑って乱歩に言う。
「然し、実年齢が12歳となれば警察官がこう言うのも無理はない。もう少し行動時間を改めよ。」
「努力する。」
福沢もアリスの事を乱歩同様、見た目以上に歳上だと思っていた為に助け船を出した心算であった。
苦笑しながらも返事をした少女を一瞥し、裏目に出たなと心の中で呟く。
「此の辺りは最近特に物騒だ。マフィア達の抗争が頻発している。」
「あー。理由わかったの?」
さして興味があるわけでもないのに乱歩が警察官に尋ねた。
「否、未だ何とも。只、ここ最近の抗争は身内同士で行われているものばかりの様です。」
「妙だな。」
「はい。情報屋を雇い、得た情報から裏切り者の判断を下し、お互いで潰し合いをしていると。」
「その情報は何処から?」
「別件で逮捕したハッカーです。『今が稼ぎ時』と言ってました。昨晩も、この近辺で同傘下の組織が抗争、相討ちです。」
真剣な面持ちで話し込む警察官と福沢。
「ねぇ。」
「!」
突然、アリスが口を挟む。
「一般人の前でそんな事話して大丈夫なの?」
アリスの存在を完全に忘れていたらしい。
抑も、話の切欠はアリスの深夜徘徊の制止だったはずだった。
「乱歩…。」
福沢は呆れた表情を浮かべながら乱歩の名前を呼ぶ。
話を拡げた乱歩当人は詰まらなそうに欠伸していた。
「ねぇねぇ。話終わった?お腹空いたよ。早く帰ろうよー福沢さん。抑も、軍警から依頼としてきてるんでしょ?詳しい資料がくるんだし、こんなところで話聞かなくていいじゃん!」
軍警から依頼。
その単語にアリスが僅かに反応した。