第6章 事件現場
男は反抗することなく乗り込もうと移動を始めたがアリスは未だ警察官に食い下がった。
「嫌。警察署なんて冗談じゃない!」
「警察署に行きたくないとは、餓鬼のくせして何か疚しい事があるとしか思えないが。」
「疚しい事の有無じゃない。警察官が嫌いなの。私は信用なんてしてない。」
普段、此処まで好戦的では無いアリスが『警察官』に食って掛かり、遂に本音を溢す。
今から約6年前の出来事は未だにアリスを縛り付けている。
其れは、違うと解っていても『警察官』で一括りしてしまう程に。
「言わせておけば随分な物言いじゃないか。」
「何よ。ヤル気?あーあ。ヤダヤダ。此れだから警察って信用できない。こんな事件で誤認逮捕?無能もいいところだよ。」
態とらしく溜め息をついてみせるアリス。
周りの警察官は怒りが爆発しそうだ。
そんな時
「その通ーり。君、良く解ってるじゃないか!」
聞き覚えの無い声が、アリス達の間に挟まった。
「?」
そう言って現れたのは2人の男。
1人は着物で、落ち着いた雰囲気の男性。40代前半程の齢であろうか。もう1人は帽子にマント。年齢は…10代後半程の見た目。
突然、声を挟んできたのは勿論、後者である。
その状況に前者は溜め息を付いている。
「何が解ってるの?」
誉められたものの、どの部分を誉められたのかアリスは疑問でいっぱいだった。
「警察が無能ということだよ!君が言ったんじゃないか!」
「あ、お兄ちゃんもそう思うの?!良かったー。仲間だね!」
同調してくれた青年に向かってパアッと笑顔を向けるアリス。
青年は其れを見て、未だ何かを続けて言おうとしたが、連れていた男性に制止され、止めた。
「乱歩、口を慎め。」
「…ちぇっ。はぁい。」
乱歩と呼ばれた青年は詰まらなそうに口を尖らせた。
「福沢さん。お久しぶりです。態々ご足労願って済みません。」
そんな子供達など眼中に無いとばかりに無視し、アリスと言い合いをしていた警察官が男性に頭を下げる。言葉遣いも丁寧だ。
此の人、只者じゃないな。
アリスはもっと面倒な者が来たのでは無いかと警戒する。
「して、状況は。」
福沢と呼ばれた男は短く質問すると、警察官が簡潔に事件の概要を説明しはじめた。