第6章 事件現場
死体がハンカチを下敷きにしていたのだ。
犯人の物としか思えない状況。
そんなところにアリスがハンカチを探しにやって来たのだった。
「だから!私は違うってば!貴方が恋人なんでしょ?」
「君は彼女の隠し子じゃないのか!?」
「違うに決まってるでしょ!何処をどう見たら似てるのよ!」
「うぐっ!」
確かに。
色彩からして一目瞭然な程、違いすぎる。
「貴方以外に怪しい人なんていないじゃん!」
「違う!俺じゃない!」
チリンッ
「!」
男の言葉に被るように鳴る、鈴の音。
アリスに「嘘」を伝える警鐘――。
矢っ張り、この男が犯人か!
「取り敢えず、同行願――」
「警部!」
アリスと言い合いをしていた警部に呼び掛けながら走ってくる警察官。
「目撃者を発見しました!」
「何?」
「昨晩午前0時頃、コンビニで買い物した2人を店員が覚えていました。」
「!」
目撃者ってコンビニ店員のオジサンか。
警察官の話を黙って聞き、自分の記憶を消しとけば良かったと後悔するアリス。
「その時までは一緒に居たんですよ!それから彼女と別れたんです。家の方向が違うから!」
男は聞かれてもいないのにベラベラと必死に語る。
「その後直ぐに、少女の方もコンビニに来たそうです。」
「!」
一斉に視線を浴びるアリス。
つい、8時間程前の出来事だ。認知症でない限り、忘れてる筈が無い。
「『深夜なのにこんな少女が1人で来たから尋ねたらママ達が外にいる』と答えた。と証言しております。」
嗚呼…そんなこと言ったかも。矢っ張り、嘘って良くない。
脳内で、後悔から反省会を始めるアリス。
「1人でそんな遅くに出歩くなんて怪しいな。」
否。そんな事してる場合じゃなかった。
「仕方ないでしょ。お腹すいたんだもん。」
ぷいっとそっぽ向く。
「矢張り署でゆっくり話を聞く必要があるな、嬢ちゃん。」
「お断りよ。何でその男が犯人なのに私が連行されるの?」
「はぁ?僕より君の方が断然怪しいじゃないか!」
「否、二人共だ。同行願おう。」
そういってパトカーに乗るよう促された。