第6章 事件現場
「あー!肉まんもないのー?!」
叫ぶだけ叫んでガックリ肩を落とす。
「ごめんねお嬢ちゃん。先刻の夫婦で売り切れちまったよ。」
ガックリと肩を落とすアリスに中年の男が苦笑しながら言った。
「そんな事よりお嬢ちゃん1人かい?こんな夜中に出歩くなんて!」
「あー…。」
時間帯を考えてなかった。
「ママ達、外にいるから。1人でお使いなの。」
ニッコリ笑って嘘を答えると納得した返事だけ返ってくる。
アリスはホットミルクティーだけ買うと、足早に店を出た。
―――
時計の針が示す時刻は午前10時。
「うぅ……。」
アリスにとっては何時もよりも少し遅めの起床。
昨晩、寝床にしているホテルに着いたのは日付が変わってから約1時間後。其れから入浴してベッドに入る頃には2時を過ぎていた。
顔を洗って髪を整える。
そして鏡に映る自分の姿を見て呟いた。
「お嬢ちゃんって言われたけど矢っ張り幼く見えるのかな。はぁ。」
歳は既に12歳。
少し大人びてくる年頃であるが、アリスの見た目は小学校の中学年程。
「仕方無い事だって判ってるけど…せめて後10㎝大きかったら!」
鏡に向かって気が済むまで嘆くと、着替えて身支度を整える。
外は、曇天。
雪はアリスがホテルに戻ってきたと同時位に降ることを辞めてしまっていた。
「雪も止んだことだし、ハンカチ探しに行こう。」
どうせすること無いし、お気に入りだったしね。と呟きながらアリスは部屋を出た。
―――
「一寸署まで同行願おうか?」
「嫌。絶対に嫌。」
そしてアリスは警察官に囲まれていた。
「私は昨日無くしたハンカチを探しに来ただけって言ってるでしょ?!」
「だったら何故そのハンカチを死体が下敷きにしてるんだね?」
「其れを調べるのが警察のお仕事でしょ?!」
「だから話を聴かせて欲しいと言っているだけだろう?」
「何も知らないのに何を話せって言うの?大体、誰なのよ此のオバサン!」
警察と盛大に言い合いをする。
なんと。
探していたハンカチが、大変なモノに巻き込まれていたのだ。