第1章 情報屋
狙いは中也ではなく、その延長線上に居た……
「!」
「「アリス!!」」
ズガガガガガガガ!!!!!
大男は一心不乱に発砲する。
激しさのあまり、周囲は硝煙で視界が不良になる程に連射し続けた。
カチッカチッ…
乾いた音が弾切れを告げる。
肩で息をしながら目的の少女だったものを見るべく目を凝らす。
硝煙が散り、だんだん開ける視界の先に
「「「?!」」」
死体として在る筈のものが、
「やれやれ。やっと終わった。」
有り得ない状態で在ることに
「なっ………なななん……っ!」
その場にいる全員が驚愕する。
大男に至っては、其の光景にマシンガンを持つ手の力を吸いとられたかの様に、その場に落とす。
「武器も持ってない子供に発砲するなんて…」
その有り得ない状態の存在である当人は、何事もなかったかの様に、銃を向けられる前と同じ姿勢で立っていた。
「矢っ張り、大人は大嫌い。」
先程との違いと言えば笑顔に代わって不機嫌な表情をしているところと、もう1つ。
「なっ……何故生きてる!先刻は、双黒に助けられたから生きていたのではないのか!?其れに何故だ?!何故俺の弾が…」
やっとの事で言葉に出した大男。
但し、其の声は身体と共に小刻みに震えていた。
大男以外の連中は未だ固まっている。
銃弾が全てアリスの前で停止しているのだ。
それだけではない。全弾、大男の方を向いているのだ。
其の光景に恐怖し、狼狽している大人達を観ることが出来て機嫌を良くしたアリスは不機嫌な顔から笑顔に戻り、クスクス笑いはじめる。
其の隙を太宰が見逃す筈が無かった。
目の前の障害を排除して大男に近付き、触れる。
異能力ーーー『人間失格』
「君も異能を持つ者なんだから此の程度の事で動揺するものじゃないよ。」
ニコニコ笑いながらぽんっと肩に触れると直ぐに、大男と間合いを取る。
まぁ、私も驚いてはいるけどね。
と、紡いだ言葉はきっと大男には届かなかっただろう。
動けるようになった中也に盛大に蹴り飛ばされ、建ち並ぶ倉庫の壁に埋まってしまう。
「無理矢理でも動こうとせいで身体が痛ぇ。」
「もう歳なんだから無理しない方がいいよ、中也。」
「手前ぇも同い年だろうが!!」
漸く、2人のペースが戻ってくる。