第5章 裏切り者
「無いよ。」
「!」
太宰の心配をよそに、アッサリと否定する。
「君の望み通りの待遇を用意できるが。」
「私は自由を制限されるのが嫌い。だから組織の一員には到底なれっこないよ。」
「そっか。それならば仕方ない。では――」
太宰の額を一筋の汗が流れる。
「また遊びに来てくれる?」
………。
「うん!是非!」
「楽しみにしているよ。太宰君。お送りして。」
「……はい。」
太宰の心配をよそに、お茶会の幕は無事に降りた。
―――
「何を考えているんだい?」
「ん?特に何も?」
ポートマフィアの拠点から出て、歩きながら話している。
「普通なら殺されてても可笑しくない状況だよ?」
「『普通なら』でしょ?でも異常だったじゃん。」
「……。」
そう。異常だったのだ。
内部調査を外注するなんて事自体が。
「ポートマフィアの首領、森鷗外……ね。」
「実際、会っての感想は?」
チラリと太宰をみて、すぐに進行方向に目線を戻す。
「この上司にしてこの部下有り。って感じだね。ホント、厄介な人達。」
はー。っと溜め息を着く。
「良かったね、治兄ちゃん。私が断ったから仕事増えなくて。」
「本当にその通りだよ。君のその見透かした態度の根元を探さなければいけないところだった。」
笑顔を崩さないまま、互いに嫌味を嫌味で返す。
「そう簡単に見付かったりしないと思うけどね。」
「おや?『絶対』に見付からない自信は?」
「無いよ、そんなの。」
「へぇー。意外。」
「この世の理に『絶対』なんて存在しない事くらい私にでも分かるよ。それに……。」
「それに?」
「相手がお兄ちゃんだしね。」
「ふふふ。それは嬉しい評価だね。」
「私はちっとも嬉しくない。」
プイッと外方向く。
そのアリスの頭を撫でる太宰。