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【文スト】不思議の国の異能少女

第5章 裏切り者


あの後。
太宰は、目を覚ましたアリスにボスが会いたい旨を告げた。

マフィアのボスに会うなど、普通なら恐怖でしかない筈だ。
故に、断られる事を前提で話した。

無理矢理連れていくにしても空間を操れると言ったアリスの事だ。簡単に逃げ出せるだろう。

逃げ出されれば、次に会えるのは何時になるか分からない。

否、もう会うことは出来ないかもしれない。

折角、苦労して見付けたんだ。何としてでもそれだけは避けたいが――。


そんな考えばかり頭に浮かぶ太宰に対してアリスの返事はアッサリと「いいよー。」だった。

………。

「意味判って言ってるのかい?」

「?うん。首領に会うんでしょ?」

「………。」

「お邪魔しました位は言っておこうと思って。」

ニコニコ笑うアリスを見て太宰は頭を抱えた。

矢張り意味が判っていない。

此れだけの事をやってのけたのだ。

知られてはいけない情報まで得てしまっている。


仲間に入るか、殺されるか―――。


迫られる選択は予想が付いていた。



筈だった。


「森おじちゃん!此の紅茶美味しい!」

「そうだろう。お代わりもあるよ?」

「わーい!あ、此のケーキも美味しい!」

何だ?この光景は。


太宰をよそに、お茶を楽しんでいる2人。

太宰は先程までの自分を責めたくなった。


ボスについて、1番大事なことを忘れていたのだ。

「ほら、治兄ちゃん此れ美味しいよ?あーん。」

言われるがまま口を開けるとケーキを放り込まれる。

「ずるい!アリスちゃん!私にも!」

「もう食べちゃった!」

「酷い!」

本気泣きをする森に太宰が口を開く。

「あの、首領?此れは一体どの様な状況で?」

「見たらわかるだろう、楽しいお茶会だよ!」

「はぁ…そうですか。」

太宰は飽きれ気味に答える。

アリスはお腹いっぱいと、満足そうに言うと2人に告げる。

「そろそろ帰らないと。」

「「!」」

時間を気にするように時計に目をやるアリス。

それに返したのは森の方だった。

「此処に居る気はないかい?」

「!」

矢張り。

太宰に緊張が走った。
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