第5章 裏切り者
「食うだけ食ったら寝ちまうとか本当に餓鬼だな。」
テーブルに伏せて眠っているアリスの頭を撫でる。
「って…何してんだ?俺。」
1人でツッコミを入れる中也。
ガチャリ
そんな時、自分達のいる部屋の扉がノックも無しに開いた。
「終わったのかよ。」
「ああ。」
「?」
未だ何か有るのか、太宰の表情は暗い。
片付かなかったのか。
或いは新たな問題が生じたのか。
アリスの隣に座り、中也と同様にアリスの頭を撫でる。
「首領にバレた。」
「はぁ?何がだよ。」
「アリスの事だよ。」
溜め息を着く。
「!」
「明日連れてくるよう言われたが…果たして聞いてくれるだろうか。」
心底嫌そうに呟く。
会わせる気など全く無かったのだ。
「会わせることには問題無ェだろ。」
「大有りだよ。」
「便利な異能力じゃねーか。敵に回すよりいいだろ。」
勧誘は間違いなくされることは中也も判っていた。
「そんな敵に回したら厄介な子の事を、誰が調べるんだい?」
「!」
確かにそうだ。
素性が判らないまま強者が仲間になろうものなら万が一、反逆を目論めば『内側』から壊される可能性がある。
それこそ今回のように、だ。
「此れだけの力を有しておきながら裏社会で『一切』情報が出回ってないのだよ?それを調べろなんて言われたら………溜め息しかでない。」
やれやれ。大袈裟に溜め息を着く。
しかし、首領にバレない方が難しかったのだ。
此処はポートマフィアの本部なのだから。
そんなことになってる等、露程も思っていないアリスは無邪気な表情で眠ったままだ。
「はあ。」
その表情を見て、太宰は本日何度目か分からない、深い溜め息を付いた。
次の日―――
アリスは森の部屋の前に来ていた。
勿論、隣には太宰。
太宰は笑ってはいるものの、どこか暗い。
アリスは何事でも無いような表情をしている。