第5章 裏切り者
「却説。」
そう言いながら太宰が何処からか戻ってくる。
と、いうより何時の間に居なくなっていたのか。
「何処行ってたの?」
「機材置き場だよ。あれ?やけに大人しいではないか。何かあったかい?」
「………。」
太宰は今から壁に繋ぐ予定の、顔面蒼白で震えている人間に目を向ける。
入り口に在るのは拷問器具ではなく大量のライト。戻ってきた太宰が何処からか持ってきたものだ。
影男を牢屋から連れ出し、壁に固定する太宰。
「抵抗もしないのか。何をしたんだい?」
「ん?特に何もした覚えはないけど……ね?中也お兄ちゃん。」
「……まあ。特にはな。」
アリスの一言がよっぽど怖かったのか。
震えは止まることを知らず、抵抗する意思は生まれることすら出来なかった。
固定が終わると男をライトで照らす。
勿論、影を殺すためだ。
此処までやって漸く太宰はアリスの方を向いた。
「アリス、ティータイムなんて如何だい?用意させよう。」
「ティータイム!賛成だよー!ケーキも食べたいー!」
太宰に抱き付いて喜ぶアリス。
その頭をぽんぽんと撫でると中也の方を指差して言った。
「ケーキは丁度切らしてしまっていてね。中也に好きなものを好きなだけ買って貰うといい。」
「!」
急に話を振られる中也。
その意図を、説明を受けずとも正確に汲み取った中也は、はぁ、と溜め息をついてアリスの手を取り、部屋から連れ出す。
「中也兄ちゃん、1個じゃなくてもいい?」
「あー。好きなだけ買え。褒美だ、褒美。」
「わーい!有難うー!」
楽しそうに話す二人を笑顔で見送る太宰。