第5章 裏切り者
目の前の漫才としか思えない会話を、只、眺めていた男達に急に悪寒が走る。
「此の男達と違ってね。」
急に向けられた殺気に青褪めるしか出来ない男達。
先程までは其方側だけに外にいる広津も額に汗を浮かべていた。
1人の男が漸く声を発する。
「何故です?!何を根拠に!私は決して裏切り者ではありません!」
「だって、アリス。」
太宰は男の方を向いたまま、目線だけアリスに移し言う。
「否、嘘だらけだよ。私の頭の中の警鐘は鳴りっぱなしだよ…。」
うんざりしながら答えるアリス。
広津は疑問をアリスに投げ掛ける。
「君は嘘が判るのか?」
「うん。そうだよー。便利な力でしょ?」
クスクスと笑って答える。
その光景を見て男達は怒りをアリスに向ける。
「そんな餓鬼の言うことを信じるんですか?!」
「何を根拠に!だったら証拠の提示を!」
「!そうだ!証拠の提示をお願いしますよ!」
「他に仲間は何人いるの?」
男達の言葉を遮り、質問するアリス。
「3人?」
「何を言ってるんだ?!」
「5人?」
「抑も、裏切り者なんかじゃないって言ってるだろう!」
「10人?」
「…何を根拠に!」
「15人かな?」
「いい加減にしろよ、此の糞餓鬼が!」
「おや、誰だい?私の可愛い恋人を糞餓鬼呼ばわりする奴は。」
太宰が口を挟む。男達が一気に口を閉ざす。
「他に10人以上、15人以下の仲間がいるんだって。」
「「?!」」
ハッキリと言うアリスに驚愕する男達。その表情が図星である事を証明している。今の会話だけで何で。
「最初の質問の時点で仲間がいることは判ってたから。」
ニッコリ笑って告げるアリス。
「人間、疚しい事をしてて其れを指摘されたとき、表面上は取り繕えても中身は正直に反応しちゃうもんだよ。」
「嘘発見器みたいなものか?」
「そうそう。鼓動が速くなったからねー。みーんな10人で。」
「「!」」
「まぁ、一番に驚いてたのは治兄ちゃんの発言だけど。」
「嗚呼、アリス!私の名前を呼んでくれるんだね!」
「緊張感が続かねーな、おい。」
呆れて中也が突っ込む。その時、アリスの背後に何か蠢く。アリス自身の影だ。纏わりついてアリスを拘束する。