第5章 裏切り者
そういえば―――。
「私の異能力『人間失格』は、ありとあらゆる能力を無効化にする能力だ。」
アリスは黙って聞いている。
「如何して能力が発動出来た?」
今までもそうだったが、アリスは能力について一切話さない。
「………。」
無理矢理に聞き出そうとした結果がこの警戒だ。
やれやれ。遣り過ぎたか。
溜め息を1つ着いて、ベッドから抜ける。
元より、駄目元で訊いてみただけで返答を得られるとは思っていなかった。
それよりも今は、裏切り者の炙り出しの方が先決だ。
既に判っている『嘘を見抜く能力』さえ有れば直ぐに片が付くだろう―――。
そんな考えが太宰の脳内を巡る中、アリスの声が思考を停止させた。
「私の異能力は『在るのに無いもの、無いのに在るもの』を自在に操る力だよ。」
「………え?」
太宰は未だベッドに座っているアリスの方を振り返る。
アリスは続ける。
「操れるものによって条件が変わったりもするけど、1つだけ。自分の意思に関係なくオートで発動する条件があるの。」
「条件?」
「私じゃない誰かが私を傷つけること。」
「!」
「普段の嘘は、此れで判別してるの。」
ニッコリ笑うアリス。
「この間のあれは、太宰のお兄ちゃんの「異能力『無』効化」と私の「異能力『絶対』発動」の矛盾が生じて、異能力同士が反発したんだと思うんだ。」
矛盾か。
「じゃあ、あれ自体はアリスの能力ではないと?」
コクりと頷く。
異能力の矛盾。
この少女はそこまで見越して戦っていたのか。
「解っててやった訳じゃないけど、賭けに出て発動したのは間違いないよ。お陰で凄く消耗した。一杯寝てたでしょ?」
「丸2日だね、今日で3日目。」
そっか。と呟く。
「『ハッピーアンバースデー』は条件を満たせば必ず発動するオートの力だけど、逆に故意に発動させると消耗が激しいんだ。」
「何故?」
「『手段を問わないから私を傷付けるものを排除したい』と云う意思を尊重するんだと思う。手当たり次第、操作対象のモノを駆使して相手を殺しに掛かるんだ。」
「!」
「私が普段なら操作しない様なもの、或いは普段なら操作できないものまでを操作しちゃう。だから消耗が激しい。」
のんびりとした口調で話す。