第5章 裏切り者
太宰は隣で眠る少女を見る。
心配だが、何処かに異常がある様子でもない。
只、2日間眠っているだけ。
太宰はそっとアリスの頭を撫でる。
少し微笑んだ気がして何度か続けた。
自分も幸せそうに笑っている事に果たして気付いているのだろうか……。
自然に起きるまで寝せておこう。
そう思ったのは、このままにしていれば少女を手中に収める事が出来るからか。
「私も休むかな。」
太宰もアリスの隣で横になった。
―――
「!」
パチッと音が聞こえそうな位に目を開けたアリス
。
三日目にして、漸く目を覚ましたのだ。
見慣れない天井に少し慌てた様子のアリスだが、身体が思うように動かないことに気付き、その原因を探る。
「?」
自分の腹部に在るのは人の腕。
そろーっとその腕を眼で追う。
「な、な、な、な、なーーー!?」
太宰治!?
寝惚けていた脳が覚醒する。
「ん―………。」
反対に、その声で目を覚ました太宰は未だ半分夢の中。
「何だい?朝っぱらから……もう少し寝せてくれ。」
気付かなかったがアリスの頭の下にも腕が一本。
「!」
アリスの身体に回してある腕に力を込めて、寝直そうとする太宰。
「イヤイヤイヤ、おかしいから!何で一緒に寝てるの?!」
アリスはバタバタと暴れて太宰の腕から抜け出し、ガバリと起き上がる。
「……。」
若干パニックの様だ。
銃で乱射されたり、
拉致されてり、
壁に張り付けにされたり、
首を絞められたりと、散々な思いをしたくせに。
それらのどの状況よりも慌てている。
「何でって…此処は私のベッドだよ。」
「!」
いや、聞きたいことはそれじゃない!と、ツッコミを入れたと同時に寝る直前の事を思い出す。
「否、それでも床に寝せてくれれば良かったじゃない!」
「…そんなに私と寝るのが厭かい?」
「嫌に決まってるでしょ!」
バッサリとアリスは言う。
「そんなにはっきり言われると、流石に一寸傷つくよ。」
欠伸をしながら上体を起こす太宰。
「自分を殺しかけた人と寝てて嬉しいと思う人が居ると思うの?!」
「あ、そっち?」
「?」
先日の出来事はアリスにとって結構なトラウマになっているようである。