第1章 情報屋
「どういう心算だい?」
最早、笑みすら作らず冷ややかな目でアリスを見下ろす太宰。
「何が?」
「惚けるんじゃねぇ!囲まれてるじゃねーか!」
双黒に挟まれ殺意を向けられるもアリスは全く動じず、自分も辺りを見渡す。
そして一息付いて満面の笑みを浮かべて2人に告げた。
「報酬分、きっちり働こうと思って。」
ハッキリと答えたアリスの声を合図にしたかのように、先程まで朧気だった人の気配が明確なモノへと変わる。
「そんな餓鬼に情報を依頼するとはポートマフィアも落ちたもんだなぁ。」
手にマシンガンを持った、体格のよい男が姿を現す。
其の男に続き、きっちりと武装した連中が一斉に3人を囲む。
その数、凡そ伍拾人――。
「ああ、成程…そういうことか。」
太宰は現れた連中の顔をざっと確認すると、ふぅと息を吐き、何時もの調子に戻る。
「あ゙?!何がだよ。つーか、何でお前も囲まれる側に居るんだよ。」
「え?」
1人で納得する太宰と、自分達を嵌めようとしているだろうアリスに忙しくツッコミを入れる中也。
自分の立ち位置について、どうして其の様なことを言われるのか理解できないアリスは首を傾げる。
その仕草に、怒りを通り越したのか。
「お前、俺達との取引情報を此方等に流して俺達を嵌めようとしたんじゃねーのかよ?」
それなのに自分迄囲まれて世話ないなと、呆れ果てた表情でアリスに問うも返事したのは太宰の方だった。
「違うよ、中也。否、実際は中也の言う通り、情報を流して此処に集めたのだろうけど…目的が違う。」
「はあ?」
違うかい?と、先程までの表情ではなく、普段通りの。中也に話し掛けるのと同じ様子でアリスに話し掛ける。
それに対して、アリスはクスクス笑いながら頷く。
「どうせなら此処に集めた方が一片に片付くし、何より…」
2人から視線を外し、周りを一瞥する。
子供らしい笑みを浮かべて最後に目の合った、体格のよい男に身体ごと向ける。
男は既に銃口をアリスに向けているというのに。
そんな状況にも関わらず、アリスは続けた。