第4章 安全確保
「あ!」
「人の部屋に入る時はノックくらいし給え。」
常識を説くも、中也がこの様に入室してくる心当たりが太宰にはあった。
先程、帽子に仕掛けた嫌がらせに気付いたか。
「また人の帽子に仕込みやがって!」
どうやら中りらしい。
その乱入者を指差して、満面な笑みを浮かべるアリス。
「この人がいい!」
「だって、中也。行ってらっしゃい。」
「はぁ?!」
訳も分からず2人に言われるがまま、中也が運転手となった。
―――
「何で俺が餓鬼の送迎なんかしなきゃなんねーんだよ。」
苛々しながら呟く中也にアリス以外の少女達は怯えている。
「怒り過ぎると身体に悪いよ?あ、だからチビなんだよ!」
「誰がチビだ?!手前ェの方がチビだろうが!」
クスクス笑うアリスを見て気付く。
太宰が探してた餓鬼ってこいつの事だったのか――。
確かに異国の人形の様に愛らしい。
……口は悪いが。
「抑も、なんで馴れ馴れしいんだよ。」
「ん?だって…あ。」
この間、会ったばかりなのに。
そう告げようとした。
「?何だよ」
そして、思い出す。
自分が彼にしていることを――。
「『お久しぶり』」
アリスは中也に笑顔を向けて云い放つ。
「手前ェ、今何し…あー!手前ェはこの間の!」
アリスの声が変に脳内に響いた途端、中也は視界の端に居る少女が顔見知りだった事に気付き、大声で反応する。
「後で質問に答えてあげるから今は安全運転でお願い。あ、彼処でいいよ。」
前を見ずに話し掛けてきた中也を制止し、目的地を指差す。
大通りを挟んで向かい側に見えるのは警察署。
アリスは後ろに乗っている少女達に言った。
「車から降りたら真っ直ぐ警察署に行くんだよ。貴女達が証言しなきゃまた被害が出てしまうから。」
コクンと全員が頷いたのを確認して車のドアを開ける。
皆、一斉に車から降りていく。
他の少女達が降りてしまい、最後だった◎◎とその姉がアリスに話し掛ける。
「色々有難うございました。」
「お姉ちゃんは行かないの?」
◎◎は心配そうな声でアリスに話し掛ける。
その言葉に首を横に振る。
「ほら、早くお行き。」
◎◎はバイバイ、と手を降りながら車から降りていった。