第4章 安全確保
異能力―――『落椿』
ガキンッ
「!」
嫌な音と共に鉄格子が一本変形する。
その光景を目の当たりにし、「ひぃっ」と悲鳴をあげ、更に怯え出す少女達。
部下も少し怯えている。
「もう一度だけ聞こう。」
広津が元の位置…アリスに歩み寄りながら静かに言う。
「知り合いが居たのではないかね?」
先程迄とは比べ物にならない位の殺気を向けて、広津はアリスに問い質した。
「そんなもの見せられたって、何度聞かれたって、答えはずっーと一緒だよ。知り合いなんて居ないってば。」
プイッとしながらアリスは答える。
「そうか。ならばもう用は済んだ。」
手を挙げ、アリスに触れようとする。
「死ね。」
「やぁ。進展はあったかい?」
広津がアリスの頭に手を触れる迄、僅か3センチ。
緊迫した空気を明るい声が遮る。
「!?」
其れと同時に現れたのは、つい先程、広津が悪魔と比喩した少年。
広津が手を引っ込め、悪魔こと、太宰の方を向く。
部下は直ぐ様、太宰向かって膝を折り頭を垂れる。
「太宰君……。」
「!あれ?君は…。」
広津に名を呼ばれた事よりも、壁に繋がれている少女に気をとられる太宰。
「……太宰治……何で此処に…。」
アリスにとって今、一番遇いたくない人物ナンバーワンであり、太宰にとって今一番逢いたかった人物ナンバーワン。
各々が心に思っている事の通りに表情を浮かべる。
「やぁ、アリス。暫く振りだね。元気にしてたかい?」
「うわぁー。最悪。お兄ちゃんが居るってことは此処はポートマフィアの傘下組織だったの?」
満面な笑みで話し掛ける太宰と、心底嫌そうに話すアリス。
「外れ。」
「!」
太宰の否定に大きく反応する。
と云うことは、ポートマフィアの本拠地ってことか……!
アリスは大人しくついて来たことを反省した。
状況は最悪。
目の前の連中だけなら如何にかなったものの……。
この男を掻い潜って、檻に居る少女たち全員を逃がすことなど不可能だ。
アリスは思考を廻らせる。
「知り合いかね?太宰君。」
「うん。一寸ね。広津さん、私が代わろう。」
「!」
太宰がそう言うと、広津は直ぐにアリスから離れた。