第4章 安全確保
「話せって言われても。」
アリスは口を尖らせて話始める。
牢屋の中の少女達は「次は自分の番になるかもしれない」という思いを隠せなかった。俯き、泣いていた事を止めて広津とアリスのやり取りを食い入る様に観ている。
「知らない男の人に袋を被せられて誘拐されたんだよ。」
「知りたいのは其処ではない。何故、君達を誘拐した連中が死んでいたのかと言うところだよ。」
「黒い服の人達が急に来て、銃を乱射していったからだよ。」
「君達は其れを観ていたのかね?」
「他の子達は知らないけど私は檻の中から観てたよ。」
他にすること無かったし。
相手を煽りそうな一言だけ心で呟きながら笑って答える。
部下はアリスの巫山戯た態度に怒りで震えている。
今にも銃を突き付けたいという衝動に駆られるのを必死に押さえる。
先程、既に突き付けた経緯があったのだが広津に制止されてしまったのだ。
広津はその態度に怒ることはなかったが、是れ以上は言葉だけでは無理だと悟る。
手足を拘束されてる状況で笑いながら返答出来る子供など、私は1人しか知らない。2人と居て欲しくない存在だ―――。
「……?」
広津が急に黙りこんだのを、不思議そうに見つめるアリス。
広津も、アリスを黙って見返す。
幼すぎるが故、確信が持てないが自分達の怖さを識らない無垢な少女であれば牢屋の中の少女達と同様の状態であろう。
真逆とは思うが……。
自分の知っているその子供は悪魔に等しいが、目の前の子供も同類なのかもしれない。
―――落ち着き過ぎている。
「もう質問は終わり?」
キョトンとした顔で静寂を撃ち破る。
「否。」
横目で、怯えた様子で此方を観ている少女達を確認しながら口を開く。
「次が、最後の質問だ。」
「あ、やっと終わるの?手も足も痛いし、お腹も空いてるから良かった。」
広津は続ける。
「マフィアは目撃者を生かしておく筈がないのだよ。君達の中に黒い服の人たちの知り合いが居たのではないかね?」
「さぁ?単に私達の入ってた檻は宙ぶらりんだったから、見えなかったんじゃないのかな?」
その答えを聞くと、広津は少女達の居る檻の側まで移動し、そっと鉄格子を触れた。