第4章 安全確保
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「糞っ!終わらねー!」
中也がイライラしながら叫んでいる処に太宰がノックもせずに入室してきた。
「あんまり苛々すると禿げるよ。」
「誰のせいだと思ってるんだ!あ゙?!」
押し付けられた仕事が終わらずに発狂していたが、その原因分子は能天気なことを口するため怒りが更に増す。
思わず太宰の胸倉を掴む中也。
「?!」
そして先刻までとは違う匂いに気付き、直ぐに太宰を離す。
「何だ?遊び呆けてたんじゃねーのかよ。」
「失礼だなー。ちゃんと仕事していたとも。中也と違ってね。」
「俺だってしてたっつーの!」
完全に遊ばれている中也。
チッと舌打ちして椅子に座り直す。
「で?誰を殺ったんだ?」
血の臭いを纏う太宰に問う。
「広津さんの部下だけど?」
「!」
構成員とはいえ、仲間を始末したと云うのに。
日常会話の延長の様に、太宰はアッサリと中也の質問に答えた。
「へっくしゅん!」
「風邪か?」
「否、誰かが私の噂をしているようだね。」
モテる男は辛いね等と言ってのける太宰を阿呆呼ばわりし、話の続きを促す中也。
「で?黒幕は誰だ?」
「其れを吐かせる前に死なせてしまったのだよ。」
やれやれ。
そう言いながら溜め息をつく。
拷問に失敗した?こいつが?
「其奴等も拘束中だよ。」
中也の思考を読んで太宰は答える。
「成程。拷問を執行していた奴も裏切り者か。」
「聞けたのは意味深な事だけ。『俺は言われた通りにしただけだ』ってね。」
「…ってことは広津さんも黒か?」
「其れは本人に聞かないと何とも言えないね。命令したのは果たして広津さんなのか或いは別人なのか。」
「……。」
若し、広津までも裏切っていたならば。
此れは簡単に片付く案件ではない。
「向こうの様子も気になるし、広津さんに会いに行くとしよう。」
太宰は、僅かな時間しか滞在しなかった部屋を後にした。