第4章 安全確保
自分以外の子達は皆泣いている……。
その様子を見てアリスは複雑な心境になる。
異能力を持つが故に落ち着いていられる事を良しとしている反面、普通の女の子ではないと云うことをひしひしと思い知らされていた。
でもアリスは知っている。
たとえ力があろうとなかろうと、泣いたところで物事の解決にはならないことを―――……。
「はぁ。」
そんな辛気臭い事を考えてしまった思考を切り替える。
そして、脳裏に浮かんだ言葉を呟いた。
「お腹空いたなー。」
「!」
少女達だけではなく見張りの男にも聞こえていたらしく、驚きの表情を向けられる。
「え?何?何か変なこと言ったかな?」
「……自分の置かれてる状況が判らないらしいな。」
暖気な調子で反応するアリスに苛つきを覚える見張り。
そう言うと男は牢屋の入口を開け、アリスに出てくるように命令する。
「あ、出してくれるの?有難うー。」
手枷を外し、その手首を掴んで壁側に連れていく。
「…あれ?もしかして私がトップバッター?」
手足を拘束され直し、壁に張り付けにされる。
「俺はお前みたいに余裕があるやつを恐怖に突き落とすのが一番、楽しみなんだよ。」
「ふーん。」
大して興味が無い、と云わんばかりの返事。
「!手前「私もそうだな。」…っ!」
男が言い返そうとした瞬間に、部屋の入り口から別の声が響き渡った。
「!」
広津が戻ってきて、会話に加わる。
見張りの男ですら額に汗を浮べる程、空気が一気に張り詰めた。
「貴方もかー。紳士みたいな見た目なのに中身は真っ黒だね。」
「なに、此の職場に勤めて長いからな。」
其れにも拘わらず、クスクス笑いながら話しかけるアリスに広津も普通に返事をする。
「却説。」
広津が仕切り直す。
男と立ち位置を代わり、アリスの目の前まで近寄ると
「知っていることを素直に話すんだ。」
静かに拷問の始まりを告げた――。