第19章 異世界コラボ~暗殺教室編~
暫く無言で抱き合って……
というより太宰が一向に解放する気配をみせないためアリスから動き出した。
「いい加減離して治兄」
「……やだ」
「逃げたり追い出したりしないから」
「……。」
アリスのこの言葉で漸く腕の力を緩めた。
アリスはソファの下にペタリと座って、机に置いていたパソコンを立ち上げる。
太宰ものそりと身体を起こしてアリスの後ろに座り、背後から抱き締めながら画面を見る。
「私に内緒で中也と取引したでしょ」
「内緒なのに何で知ってるの?」
「……。」
不機嫌な顔をしていた太宰が、
しまったと云う顔を一瞬したのをアリスは確りと横目で確認した。
「どうせ此処の場所も併せて中也兄を脅して訊き出したんでしょ」
「……だって」
「まあいいや。中也兄に意地悪したら怒るよ」
「……。」
「返事は?」
「………はい」
太宰の返事に対して満足そうに頷くとアリスはパソコンを操作し始めた。
……中也と内緒で会ったこと怒ってるんだけど
なんて云ったら、また喧嘩になって傍に居られなくなるかな。
太宰は無言のままアリスを抱き締める腕の力だけ強めた。
「治兄、『黒真珠』の話って探偵社にも来てる?」
「『黒真珠』?また珍しいモノの話を………あ。だから中也が動いてるのか」
「え。肝心な事、何も聞いていないの?」
「私は『アリスと密会した』って事実だけ知られれば充分だもの。後はアリスに訊けば善いって思ってたし」
ここ暫くの間、まともに機能していなかった太宰の頭が漸く回り始めたようだ。
何時ものように、様々な想定が頭を駆け巡り始める。
「あー成る程。理由も聞かずに中也兄と只々会ってたって思い込んでたからそんなに不機嫌ってわけね」
「仕方無いでしょ!仕返しかなって思っちゃったんだもの!」
「誰が悪いの」
「………私。でも、こんな風にしたのはアリス」
そう云ってアリスの首筋に唇を寄せて、吸い上げる。
アリスはピクッと反応するも抵抗はしなかった。
「『治』は拗ねると私より子供っぽい」
「…自覚しているとも」
仲直り。
その意を込めて2人は唇を重ねたのだった。