第19章 異世界コラボ~暗殺教室編~
取ってある部屋に入って直ぐに入浴を済ませたアリスは中也と取引した『黒真珠』の行方の割り出しを行うべくベッドのある部屋ではなくソファやテレビのある部屋へと向かった。
「……え。」
そこで、入浴前には無かったものに気付いて思わず声を上げる。
アリスの立っている位置からはソファの背面しか見えないのだが、その端ーーー肘をおける部分から人間の足が2本、にょきっと顔を出していたのだった。
誰にも……否、『ワンダーランド』という反則級の異能を持つ自分に気付かれずに侵入が出来る人間などアリスは1人しか知らなかった。
油断している事が前提ならば、他に2人程心当たりがあるけれど、その内の1人は先程自分を此処まで送ってくれた人間なので有り得ないし、もう一人についても場所を知るわけがないから抑も辿り着けない筈……。
アリスは判りきった人物の顔を拝むべくソロッとソファに近付いた。
「……。」
矢っ張り、と。
アリスは溜め息を着いた。
予想外だったのはその人物が無防備に眠りこけていることくらいで、その他は凡て予想通りの人間。
「治兄……何で此処にいるの」
アリスはぺちぺちとその人間の頬を叩きながら話し掛ける。
「んぅ…?」
めずらしく本当に眠っていた事にアリスは少し驚いた。
ゆっくりと目を開いてアリスの姿を捉えた人物はスッと手を伸ばして………アリスを勢い良く抱き寄せた。
「うわっ!?もう!何するの!?」
「アリス………」
完全にアリスをぎゅうぎゅうと抱き込んで甘い声でアリスの名を呼んだ人物、こと太宰はアリスの名前を繰り返し呼び続けた。
「……怒ってるもん」
「判ってる……ごめん」
「……。」
珍しく素直に謝った太宰の顔をようやく見上げるアリス。
「悪気はなかったんだよ。ただ…限界も来てたし少しは一緒に居られると思ったのに、私よりも仕事を優先して起きたら直ぐに出ていっちゃったから……その。私も一寸、意地悪しただけで……」
「……。」
いい大人が何云ってるんだ。
国木田や元相棒の中也がこの場にいれば鋭く突っ込んでくれただろうと思う内容を太宰は弱った声で語った。
それほどの下らない話を聞いてアリスも大きな溜め息を溢したのだった。