第4章 安全確保
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「いいか!見付け次第、1人を残して全員殺せ!」
「はっ!」
帽子を被った小柄の男が指示を出すと、男が部屋を飛び出す。
其れを見届けた後、彼、中原中也は目の前にある椅子に荒々しく座る。
「ったく、未だ終わらねーのかよ裏切り者の洗い出しは!」
舌打ちしながら独り、ごちる。
「中々、尻尾を出さなくてね。」
「!太宰……。」
思わぬ返事に驚いた表情を浮かべる中也。
「起きてたのかよ。」
「あれだけ五月蝿ければね。」
ふあーっと欠伸をしながら、太宰と呼ばれた男は机に片肘を付き、其に顎を乗せて話を続けた。
「今回も如何やら、あの影男が一枚噛んでる様なのだよ。」
「!」
影男―――。
先日、ポートマフィアを裏切った組織のボスで、影を移動できる異能力の持ち主だ。
色々あったが、漸く見つけ出して拘束したものの構成員の不手際で見事に逃走されてしまった。
矢張り、一筋縄ではいかないか――。
中也の苛立ちが、舌打ちとなって表に現れる。
「分かってはいたけど、見付からなくてね。」
「当たり前だ。簡単に見つかる奴なら逃走られたりしてねーよ。」
何云ってんだ、コイツは。
そんな眼で太宰を見る。
然し、見られている太宰は溜め息を付きながら違う方向を見ている。
「其方じゃないよ。」
「はぁ?」
嫌な予感が中也の頭を過る。
「……まさかお前、此の渦中に違うモン捜してんのか?!」
「うん。」
「!」
アッサリといった肯定の言葉に、怒りのあまり勢いよく立ち上がる中也。
そんなことお構い無しで太宰は笑顔で続けた。
「一寸、可愛い少女をね。」