第1章 情報屋
月明かりのように白い肌。
空を映したようなブルーの瞳。
肩より少し長い髪はミルクティーブラウンで緩やかなウェーブを描いて、リボンの付いたカチューシャをしている。
纏っている衣装はレースをあしらった白のブラウスに、フリルのついたブルーのスカート。
アンティーク調の懐中時計を首から下げており、背中には兎の形をしたリュックを背負っている。
齢は10代前半だろうか。
否、二人の前に立ったのは10代に乗っているかも怪しい程に幼い少女だった。
日本人とは思えない色彩を持つ、異国の人形のような其の少女は、笑顔から一転。
頬を少し膨らませて2人を睨み付ける。
「餓鬼じゃないもん。…チビ。」
「手前の方がチビだろうがぁ!!!」
チビという単語に過剰に反応した中也は、手に持っていたアタッシュケースを地面に叩きつけ、ずかずかと少女の方に歩み寄る。
凄い気迫で中也に間合いを詰められるが、少女は動くことはしなかった。
「ほら見ろ!判ったか糞餓鬼が!!」
「判んないもん。見た目じゃなくて脳内がチビって云ったんだから!」
「んだとコラ!」
先刻までの緊張感が何処かに出掛けてしまったのか。
太宰は仲良く口喧嘩する2人を暫くの間、欠伸を挟みながら傍観していた。
「!」
然し、突然、何かに反応して口を挟む。
「大人気ないよ、中也。だから脳内までチビって言われてしまうのだよ。」
「うるせぇ、太宰。…一寸待て。今、『まで』って言わなかっt「君、名前は?」聞けよ、人の話!!」
怒りの矛先が少女から太宰に代わるも、太宰は何時もの通り中也を適当にあしらう。
「私はアリス…」
中也とのやり取りの途中だったため温度差に付いて行けずに戸惑ったようであったが、少女は躊躇う事なく名を名乗った。
「アリスかー。良い名前だ。識っていると思うが私は太宰治だ。」
そう告げながら右手を差し出す。
アリスはキョトンとした顔で太宰を見るが、直ぐに笑顔で自分の右手を差し出した。
「えへへ。握手って久しぶり♪」
ぶんぶんと手を上下に数回振って手を離す。
「楽しそうに話していたところ申し訳ないが、取引を始めようか。」
笑みを称えて太宰が本題に入った。