第1章 情報屋
成功報酬の金額と取引場所は此方の指定。
故に、全く彼方の情報がない。
「たった数時間で得られた情報がどれだけのものか楽しみだね」
「思ってねーだろ。」
「ふふふ。そんなことは無いさ。」
悪戯の可能性が9割…否約10割。
抑も、我々がここ数週間探していた情報をたった1日で見付けられる筈がない。
「時間だ。」
そんなことを思いながら時計を見て太宰が呟き、中也は報酬の入ったアタッシュケースを握り直した。
「「!」」
先程まで無かった人の気配が此方に近付いてくるのが2人には鮮明に判っていた。
「気配を隠す気も無いのか。或る意味スゲーな。」
「マフィアと取引するなんて思ってない一般人なのかもね。まぁ…。」
気配のする背後を
「そんな訳無いだろうけど。」
「そんな訳無ぇだろうけどな!」
同じタイミングで振り返る双黒。
其処に立っていたのは取引相手と思われる人物。
「「?!」」
月明かりで照らされた其の姿に、中也はおろか、太宰ですら驚き、言葉を失う。
そんな2人を余所に、取引相手は満面の笑みを浮かべていた。
返答を求めた訳ではないだろう2人の台詞に律儀に反応する余裕すらある。
「勿論。そんな訳無いけど、どうせ会うんだもん。必要ないでしょ?」
クスクスと笑いながら取引相手は言葉を続ける。
「初めまして。―――双黒さん?」
「「!」」
驚きから警戒に切り替える。
双黒と名を馳せた自分達を認識しているにも関わらず動揺がない…。
間違いなく裏社会の人間だ。
たとえその人物が―――
「此の餓鬼が情報屋だと…?」
「其の様だね。」
自分達より幼くしか見えない少女だとしても。