第3章 人攫い
「小娘、説明しろ!此れは貴様の仕業か?!」
直ぐに国木田はアリスに詰め寄る。それは先刻とは違う気迫。
「そうだよ。」
「何故だ!子供に何の罪があるというのだ?!」
「其れは此の家の主に聞いて?まぁもう生きてはいないだろうけど。」
「貴様!」
アリスの胸ぐらを掴む。
然し、アリスは一切、動じない。
「国木田君。眠ってるだけだよ。」
「何の罪も無い子供を眠らせるなど!…ん?眠ってる?」
「そう。眠ってるだけ。外傷は見当たらないよ。」
「……。」
太宰の言葉を処理しきれないでいるのか。
フリーズしてしまう国木田。
「…アリスを離してくれるかい?」
「嗚呼…すまん。」
国木田は冷静さを取り戻すが、太宰は少し怒っている様だ。
服装を整えているアリスに太宰が話し掛ける。
「此処に居たって事は、▲▲が何処に居るか知ってるかい?」
うん。と頷いて、
「ポートマフィア。」
「「!」」
あっさり答えた。
「馬鹿な。ポートマフィアだと?有り得ん!」
「何で?」
「ポートマフィアはマフィアの中でも特に残忍残虐な組織だ。目撃者がいるのに生存者を残すなんて有り得ない。」
「そうだね。あ、国木田さん。」
目を伏せて相槌をうつ。そして目を開けると一言。
「何だ?」
「『お休みなさい』」
妙にアリスの声が頭に響く――。
「!何だ?急に…眠気…が。」
そう思った瞬間に襲ってきたのは睡魔。
耐えきれずにその場に倒れ込む。
「記憶を曖昧にするために現れたのか。」
「うん。きっと来るのは治兄だけじゃ無いと思ってたからね。」
苦笑するアリスに近付く太宰。
「中也か。」
「中り。何でもお見通しだね…知ってたけど。」
「誘拐された子供の名簿に●●嬢の名前があったからね。」
「他の子供達も『私に関わった時点から』の記憶が曖昧になる。中也兄もずっと一緒だったから…」
中也兄の記憶も一緒に曖昧にするよ。
そう告げる心算が全部を言えなかった。
「………。」
太宰の腕の中に閉じ込められるアリス。
けれどアリスは太宰が怒ってるのは最初から分かってた。
――聞きたい事はコレじゃ無いことも。
「取引内容は?」
太宰の声のトーンが下がった。