第3章 人攫い
そんなアリス達の会話など知りもしない子供達が口々に言う。
「特別ゲームに参加できたらお家に帰れるのに。」
「そうなの?」
アリスは笑顔を作り直し、子供達の話に耳を傾ける。
「だって誰も戻ってこないもん!!」
「きっと7人で出来るからクリア出来るんだ!!」
「そっかー。」
希望を持っている子供達の眼差しから目をそらし、アリスは思考を巡らせる。
▲▲は確か、臓器売買をしているという噂があったが。
戻ってこない子供。
即ち、売られたか、殺されたか。
―――これだから大人は………。
アリスの中で殺意が芽生える。
ピンポンパンポン――
「「!」」
音を発したスピーカーを全員が見る。
『皆、良い子にしていたかな?今から特別ゲームを始めるよ。……って、おや?大人が混ざってるね?』
変声機を使用している声。
「やった!僕の番だ!早く出るんだ!」
僕も、私もと騒ぐ。
そんな子供達に笑いかけながら、アリスは中也に話し掛けた。
「ゲームなんか参加しなくても、帰りたいなら私たちが帰してあげる。ね?中也兄。」
『!中也?!真逆……ポートマフィアの中原中也か!?』
話し掛けられた本人よりも、スピーカーの向こう側の人間の方が先に反応した。
変声機を使用していても分かるぐらいの焦り――。
「じゃあ頑張ってね、中也兄ー。」
「はいはい。」
帽子を被り直し、ニヤッと笑う。
異能力―――『汚れちまつた悲しみに』
「俺を閉じ込めておくなら鉄の扉にするんだったな!」
ドゴォッ!
絵画を蹴り砕いた時と同じ破壊音。
扉が『くの字』に曲がって継ぎ部屋にぶっ飛んでいく。
『馬鹿め!』
チャンスといわんばかりに高笑いをするスピーカーの人物――………▲▲。
その声の合間に、マイクが『ピッ』と云う、釦を押す音を拾う。
それを聞いて子供達が慌てて口を押さえる。
対して、全く怯まないマフィア達。
「一気に片付けんぞ!」
「「はい!!」」
『何故、ガスがっ…?!』
異能力ーーー『ワンダーランド』
「気体じゃ無かったら良かったのにね?」
「!?」
困惑する相手にクスクス笑いながら答えるアリス。
反撃にでた中也達が暴れ始めたのだ。
大して時間は掛からなかった――。