第3章 人攫い
異臭が収まる。
アリスは一息着いて部屋の中の方に向き直る。
「●●嬢!」
中也の部下が目的の人物を見付けたのか。
大声で名前を呼んで駆け寄っていっている。
「!貴方達は、父上のお迎えですか?!」
名前を呼ばれて泣きそうな顔で此方を見たのは1人だけ着物を着た少女だった。
「もう大丈夫ですよ!さぁ、我々と一緒に帰りましょう!」
「でも、どうやってです?」
「「え?」」
泣き出してしまった●●嬢。
確かにたった今、自分達の入ってきた扉は閉めてしまった。
「あっ……開かない!」
判っては居たが扉は勿論、鍵が掛かったようだ。
●●嬢をあやしながら困りましたねーと部下一同で中也とアリスを見る。
中也が目を反らす。
「アリス…パス。」
「え……。」
部下たちの注目が一気にアリスに向く。
取り敢えず…。
「皆でお話ししましょ?」
―――
皆の話を聞いて解ったこと。
①誰かが誘拐されて来たときのみ扉が開く。
その時にしか扉は開かないが、そのタイミングで外に出られたら家に帰れると言われたらしい。
②但し、継ぎ部屋で待つことはルール違反。ルールを破れば閉じ込められて毒ガスで殺される。
③特別ゲームが存在する。そのゲームにクリア出来れば外に出られる。ゲームの参加は「誕生日順」に7人同時に行う。
興奮した様子で話す子供の話を要約して中也達に話すアリス。
「ほんと、お前を連れてきて正解だったぜ。」
「それは良かった。」
途中までは一緒に話を聞いていた中也だったが、全く理解できなかった故、少し離れた位置に座っていた。
部下達も見た目からして子供達に恐怖しか与えなかったため、強制的に遠くに固まって座っている。
「にしても目的が何かさっぱり判らないね。中也兄、何か知ってる?」
「…知らねぇ。」
アリスと中也は小声で会話する。
「バレてるよ、中也兄。」
「餓鬼の前で言える内容じゃねーんだよ。察しろ。」
「!」
真逆…アリスと中也の目が合う。中也が頷く。
それを見た瞬間、アリスの顔が少し歪んだ。