第3章 人攫い
異能力―――『ワンダーランド』
何が起こっているのか。
一体何をしているのか。
何も判りはしない部下たちは、黙って見ている中也に倣って大人しくアリスを見ることにした。
暫くしてアリスが目を開け、スウッと手を動かす。
「中也兄、此れ蹴り砕いてー。」
「!判った。」
そう言って指差したのは趣味じゃないと云っていた大きい絵画。
ドゴォッ!
そして轟音と共に絵画が砕け、姿を現したのは1つの扉。
「「「!?」」」」
隠し部屋か。
矢張り、一筋縄ではいかない。
「……行くぞ。」
「はーい。」
中也を先頭に扉の中に入る。
「何もねーな。」
辺りを見渡して中也に対して、
「中也兄、あっちだよ。」
目の前に見えるもう1つの扉を指差しながらアリスが云う。
どうやら此処は、次の部屋の為の継ぎ部屋のようだ。
6畳ほどの何もない此の部屋を縦断して、目の前にあった扉を開ける中也。
「!」
それと同時に、何かが勢いよく飛び出してくる。
部下達が一斉に銃を構えるが、それを中也が制止する。
子供だったのだ。
子供が、絵画裏の扉目掛けて全力で走っていく。
「……っ!」
バタンッ!
然し、子供が扉に到達する前に勝手に閉まってしまう。
「…もうお家に帰りたいよ」
頑張って走った子供はその場に座り込む。
その子供から扉の方へ視線を移す中也。
開けた扉の中には、
この子供の他に30人近くの子供が犇めく光景が広がっていた。
「こんなに居たのかよ。」
チッと舌打ちして、中に入ろうとした瞬間だった。
ビー!ビー!
突然、天井に付いていた赤色灯が回りだし、警報が鳴り響く。
「!」
座り込んでいた少年が慌てて立ち上がり、アリスに言った。
「早く此方のお部屋の中に入って扉を閉めて!!」
「?」
何がなんだか判らないが少年の必死さに、全員が従う。
「そこから離れた方がいいよ!最近、此方の部屋の中まで入ってきちゃうから!!」
バタンと閉めた扉の側にいたアリスの手を子供が引っ張る。
「一体…何ご……!」
扉の隙間から異臭が漏れてくる。
「毒ガスか!」
中也がそういうとアリス以外、全員口元を押さえる。
「……下らない。」
そう吐き捨てるとアリスは扉に手を当てた。