第3章 人攫い
「あ、そういえば!先刻、私がみた人影はアリスさんだったんですね!」
「………え?」
突然、話題を振られたせいか?
アリスの反応は薄い。
「え?30分前くらいに1階で遭いましたよね?」
「6人全員撒くなんて足もお速いですね!」
……どうでもいいが何で敬語で話してるんだ?
何故かアリスにまで敬語で話す部下達に呆れる中也。
それも一瞬だけだった。
「私、此処の窓から入ってきたから誰とも追い掛けっ子なんてしてないよ?」
「「「「!」」」」
首を傾げて言ったアリスの台詞で、真面目に聞いてなかった中也がもとに戻り、盛大に舌打ちする。
「俺達以外に矢張り潜んでるのか。否、でも待て。俺が此の部屋に入る前に餓鬼が入っていくのが見えた。お前は遭遇しなかったのか?」
「してないよ。入ろうかなーって思ったときに中也兄が入ってきて机を蹴り砕いてたから。」
「!」
そんな出鱈目なことが。
いや、真逆―――……
「幽霊じゃないですか?!中也さん!」
「子供の怨念がうろうろしてるんですよ、此の屋敷!!」
「んな訳、あるか!」
殴る。
そして、静かにしておけと言い置く。
その扱いにちょっと可哀想に思ったのか。
アリスが苦笑しながら殴られた2人に告げた。
「きっと何かの異能力者なんだよ。」
「「成程!」」
おお!流石、アリスさん!等と手を叩きながら感心する部下達。
「黙ってろ!!って言っただろ!」
と殴られてる。
逆効果だった。
ゴメンね、と手を合わせて軽く会釈するとアリスは中也の方に向き直る。
「中也兄、お屋敷の中心がどの辺りか分かる?」
「あ?恐らく絵画の在るところだと思うが…。」
「じゃあ其所に向かおう。案内して?」
アリスがそう切り出して、漸く動き始めた。
―――
―――
「此処だ。」
「外から見ても大きかったけど中もこんなに広かったんだねー。」
本当に窓から入ってきたらしい。
アリスは初めて見る豪華な内装に興味津々の様子でキョロキョロしている。
「その割には、住人どころか使用人すら見付からねぇ。逃げられたか、或いは―――」
「居るよ。」
「!」
一斉にアリスの方を向く。