第3章 人攫い
「御言葉を返す様ですが、私情を挟みすぎでは。」
「あ゙?」
「中也さんの恋人なら庇いたい気持ちもお察ししますが、それは即ち反逆行為ではありませんか!」
部下の一言に瞬時に反応する中也。
「待て!誰が何時、こいつと恋仲って言ったか?!」
「そうだよ、私にはちゃんと治兄っていう恋人が居るし。」
「!」
中也を除く全員が一斉に銃を構える。
それを見てなにか閃いたアリス。
「忘れてた!治兄、マフィア辞めたんだった(笑)」
「(笑)じゃねーよ!(笑)じゃ!」
中也が盛大に突っ込みを入れる。
「収集がつかないから一寸暴れようかな。」
「…殺すなよ。」
「大丈夫だよ。」
小声で中也に話し掛ける。
態と挑発したのか。矢張り餓鬼の癖に一枚上手か。
「却説、死にたいのは…誰?」
満面の笑みで中也の部下に言い放つアリス。
こいつ、ちゃんと約束守る気あるのか――?
中也はうんざりした顔でアリスを見る。
そんな中也の心配をよそに、6人が一斉に発砲を始めた。
が。
結果等、判りきった事だった。
6人は宙に浮いており、もがき苦しんでいる。
「ちゃんと中也兄の警告を聞いていれば死なずに済んだのに。」
クスクス笑いながら6人に言う。
しかし相手は話を聞く余裕など無いであろう。
「アリス」
背後から声を掛けられ、振り向く。
もう十分だろ、と目で言われる。
「謝るから。」
「えー。でも中也兄がそう言うなら仕方無いなぁ。」
アリスが指をパチンッと鳴らす同時に、全員ドサッと床に落ちる。
その痛みに打ちひしがれるよりも、必死に酸素を体内に取り込む事の方が先決の様だ。
その6人の前に静かに歩み寄るアリス。
全員が恐ろしいものでも見るかのように顔が青ざめている。
「私、異能力者なんだよ。」
ニッコリ笑って話し掛ける。
何を今更。
そう思うだろうが当の6人は死にかけたのだ。
勿論、余裕がない。
そして次の台詞に更に恐怖を煽られる。
「嫌いなものは私を攻撃する大人。あ、貴方達なんか正にそうだよ!」
「ひっ…!」
クスクス笑うアリスの頭をぽんぽんと、中也が撫でる。
「だから言っただろうが。敵意を向ければ必ず返り討ちに合う。」
済みませんでした!!
土下座で2人に謝る。