第3章 人攫い
「ありゃりゃ。御免ね、中也兄。」
「「「中也さん!!」」」
アリスがそう言うのと、中也の部下3人が入ってくるのがほぼ同時であった。
中也の部下はアリスに向かって銃を構える。
自分に銃を向ける人数が増えても、矢張り動じることがないアリスは首を傾げて、のんびりした口調で中也に話し掛ける。
「初対面の子供に銃を向けるなんて怖がりさん?」
「俺達にとっちゃ挨拶代わりだからな。」
中也は起き上がり、アリスを膝の上に置き直す。
「仕舞え。」
「しかし!」
短く命令するも銃を下ろさない部下に中也は長い溜め息を着いた。
「中也兄の部下は中也兄の言うこと聞かないんだね?」
クスクス笑いながら言う。相手が怒ったのが空気で伝わる。
「銃を下ろせ。こいつに敵意を向けるな。」
「しかし!」
「死ぬぞ。」
「!」
中也が睨み付けながらいうと漸く銃を下ろす。
やれやれと謂わんばかりに溜め息を着いた。
「なんか失礼なこと言われた気がするんだけど?」
「気のせいだ、気のせい。」
「嘘ついても無駄だってば。中也兄の馬鹿、チビ!」
「んだと、手前ェ、もう一遍言ってみやがれ!」
「あー!痛い!痛い!ご免なさい!」
アリスの両方の米神を拳骨でグリグリする中也。
思いの外、素直に謝ったため直ぐに止める。
うーっと唸っているアリスにさっきと全く同じ質問をする。
「で、何で此処に居るんだ?何かの依頼か?」
「うん?だったら如何する?もしかしたら敵かもー」
其の台詞とほぼ同時。
ジャキッ
突然3人の男が入ってきてアリスに銃を向ける。
「およ?未だ居たの?」
「はぁ。下ろせ。」
「しかし!」
先刻と同じ寸劇を繰り返す。
盛大に溜め息を付いてる中也にクスクス笑ってアリスが言う。
「苦労するねー」
「手前ェのせいだっつーの!」
嗚呼、糞っ!!と言いながら頭をかく。
自分の膝に大人しく座っているアリスを指差し、部下全員に言う。
「絶対、こいつに敵意を向けるな。喩え敵だとしてもだ!」
「!」
中也の6人の部下が驚愕の表情を見せる。
それもそうだ。
敵でも殺すなって。
普通なら有り得ない命令だ。
否、絶対にあってはならない。
―――それがポートマフィアなら尚更だ。