第3章 人攫い
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「治兄に貰ったばかりだったのに。」
先程、男達と初めて接触した場所まで引き返してきた少女はネックレスを投げ捨てられた方向までをくまなく探していた。
投げ捨てられたネックレスは
少女…アリスの恋人である太宰治が、男達が現れる数分前にプレゼントしてくれたものだったのだ。
太宰は、武装探偵社に入社してからは多忙な日々を送っているらしい。
今日も「人探しで忙しい」って迎え
…否。連れ戻しに来た男が言う程であった。
そんな中、態々、時間を作って届けてくれたのに…!
アリスの眼に涙が浮かんでくる。
会うこと自体が久しぶりだった。
「『今日』はもう会えないかもしれないからね。」
それ故に、先程会った際に苦笑しながらそう云った太宰の顔が鮮明に浮かぶ。
時間を割いてまでも『今日』届けてくれた理由。
それは恐らく、誕生日が大嫌いなアリスへ
『誕生日が好きになる切っ掛けになれば』と云う願いが込められたプレゼントだったから―――。
「見付からなかったらどうしよう!」
キョロキョロしながら道を歩く。
足元を重点的に見ている故に、前など見ていなかった。
ゴツン!
「痛ーっ!何なのよ、一体!」
自業自得であるのに怒らずにはいられず、原因を確認する。
目の前にあるのは電柱、否。
「そうか!防犯カメラ!」
不幸中の幸いか。
探す手段を得たアリスは、周辺の防犯カメラの映像をハッキングして調べることにした。