第3章 人攫い
「だったら尚更だよ。こんな大切な日に君みたいな子を放っておくなんて最低の男だよ。」
「そんな奴忘れて楽しもうぜっ!」
プチンッ
嫌な音してネックレスが首元から離れる。
「返して!」
少女が叫ぶのを横目に、男はネックレスを反対側の道路の方へ投げ捨てた。
「あーあ。何処行ったか判んなくなっちゃったねー。」
「安心しなよ、もっと良いものを買ってあげるからさ。」
「さ、すっげー良い所に連れてってやるよ。」
口々にそう言って、少女を引き摺るように連れていく。
よっぽどネックレスが大事だったのか。
少女は抵抗する気配すらなれない様子だ。
男達は何処のホテルにするかの算段で忙しそうに会話している。
その間も少女は俯いたまま。
暫く歩いていると、俯いた少女が漸く口を開く。
「其処、左に曲がって。」
「え?」
男が聞き返す。
「場所くらい選ばせて。」
「「「!」」」
俯いているため少女の表情はうかがい知ることが出来ないが、今の台詞は男達の欲望を膨らませるには十分であった。
少女の言う通り左に曲がる。
其のまま進むが何もない。
要は行き止まりだ。
「此処が良いのかい?」
「うん。」
少女の顔は未だ見えない。
「可愛い顔してやる事大胆なんだねー嬉しいけど。」
ニヤリと下衆な笑いを浮かべる男を余所に少女は話し掛ける。
「ねぇ。何で今日が大切な日なの?」
「そりゃ、今日はクリスマスイブだ。男と女が愛し合う大事な日だろ?」
笑いながら答える。
その答えに
「嘘。」
冷やかな声で返答し、少女が漸く顔をあげる。
その表情は―――ない。
「「「!!」」」
男達が少し怯む。
目の前にいる少女は、先刻までの少女なのだろうか。
そんなことお構い無しに少女は続ける。
「私は1年、365日の中で今日と云う日が……」
突如、少女の周りから風が起こる。
「ヒィッ!」
「な…なんだ!?」
「おいっ!逃げるぞ!」
それに続いて淡い光が少女を包みこむのを見て、男達が慌てて逃げ出そうとする。
「一番大っ嫌いな日なんだよ!!」
異能力―――『ワンダーランド』