第17章 人形の館
「も…もしもし?」
『出るのが遅いよ』
「姉さん!?」
慌てて電話を確認する。
見たところで姉かどうかなど判る筈も無いのだが。
「えっ……本当に?……姉さん……?」
『つい数分前に会ったばかりなのにもう声を忘れちゃったの?』
そんなわけ無い。
呆れながら云っている表情すら浮かぶほどに鮮明に覚えている。
「いや、そんなわけないよ!真逆、電話してくれるなんて……」
『……。』
思ってもなかったから……と紡がなかったのはもう電話してもらえないかもしれないと咄嗟に思ったからだった。
『忙しいから要件だけね。アキトの探してた子は無事だったから。念のため病院に行ってもらうけど』
「ホント!?」
『態々嘘をつくために電話するわけ無いでしょ』
じゃあ、そういうことだからと云って電話が切れた。
「……もう切れちゃった……」
ツーツー……と鳴る電話を見つめる。
掛け直したら出てくれるだろうか?
いや、忙しいって云ってたから今掛けたら怒らせちゃってもう二度と電話出来ないかも知れない……
「また今度掛けてみよう……」
そんな葛藤を数分繰り返して電話番号を電話帳に登録した。