第17章 人形の館
「治兄がもう少し遅かったら私はあの男の愛玩具にされてたかもー」
「へぇー……」
「!?」
ビクッ!!
太宰が妖艶な笑みを浮かべた。
何を企んでいるのか解らないが、何か企んでいることには間違いない顔。
男が恐怖を抱くには十分だった。
「さて、と」
男の顔が真っ青になったのを見届けるとアリスは一足先に子供達の元へ向かった。
―――
「んで?」
「姉さんに背中を押されて……すみません……」
椅子に膝を組んで座っている中也と、その前に正座している黒尽く目の男三人。
そんな現場に突如として現れたアキト。
任務に失敗した構成員を怒鳴っていた中也は、一旦それを中止してアキトに注意を向けた。
入室しては拙い場面に来てしまったことを瞬時に理解したアキトは俯いたままだったが、中也はそんなアキトに怒りをぶつけることはなかった。
「『ワンダーランド』で飛ばされたか」
「……姉さんの異能ですか?」
「ああ……ん?」
マナーモードにしていた携帯が懐で震えていることに気付く。
ピッ
「何だ?お前の弟なら無事に帰ってきてるぞ。気不味いタイミングでな」
「!」
中也が電話に出るや否や躊躇いなく話すのを聞いて相手を悟るアキト
『其方の状況まで気にして送ったりするわけ無いでしょ?』
「まあそりゃそうだな。で?用事は何だよ」
『アキトに探し人は無事だって伝えておいて』
「はぁ?手前で伝えろ。俺は伝言人なんかしねぇよ」
『ケチだねー中也兄。じゃあいいや。中也兄の携帯とかをハッキングして連絡先を入手するから』
「……素直に教えてくれって云えねーの?ったく」
ピッと電話を切る。
そしてメール画面を開いて文字を打ち始めた。
「?あの……中也さん?」
「あ?何だよ」
「姉さんは何の用事だったんですか?」
アキトがそう訊ねると、おわったのか携帯電話を仕舞う。
「それは手前で訊け」
「どうやって……」
問うた瞬間に中也に持たされている電話が鳴った。
「取り敢えずこの部屋から出ろ。取り込み中だ」
「あっ!すみません!」
アキトは携帯電話の通話釦を押して部屋を出る。
パタン
「ま、良かったじゃねーかアキト」
閉まった扉に少し微笑んだ。