第17章 人形の館
「貴方の云う通りよ?死んで物言わぬ人形になるの」
「………。」
「……姉さん……」
アリスの顔が険しくなるのを見て、アキトが心配そうに声をかける。
「人間の方の身体が死んでも人形は残るから――」
「その抜け殻……不要物を金に替えてるって訳か」
「!」
館主が云い終わる前にアリスが推理を述べる。
「貴女は中々賢いのね。話し相手にしたら面白そうだから人形にしても生かしておいてあげるわ」
「先刻も言ったけどおじさんの所有物になる気なんて無いよ。その異能を防ぐ方法も持ち合わせているし、反抗する術もある」
「ふーん。そう」
アリスの言葉を大したことないかの様に返事すると指をパチンと鳴らす。
カタカタカタカタ……
「「!?」」
自分達の足元の、ボディが揃っている人形と男の人形が動き始める。
「云い忘れていたけど、本体が死んだら人形も話さなくなるように逆もまた同じなのよ」
「……へぇ」
男の人形が先頭でアリス達に襲いかかって来た。
「ッ!」
アキトがポケットからライターを取り出す。
「アキト駄目だよ」
「姉さん!?でもっ……!」
そのライターを取り上げてから伝えると頭を撫でてやるアリス。
「此処で火事が起これば助かるものも助からなくなるから」
「!」
ニッコリ笑ってそう言うと人形達に向かって手を翳した。
「『ワンダーランド』」
「!?」
ミシミシッ!
嫌な音を立てて人形が床にへばり付く。
『重っ……痛い!』
男の人形から声がする。
しかし、アリスは止めなかった。
そしてついに。
ボキン……
『ぎゃあーーーー!』
男が叫ぶと同時に、眠っている体の右腕が変な方向に折れ曲がる。
「何の攻撃か判らないけど止めないならその男は死ぬわよ」
オーホッホッホ…と高笑いする館主。
腕の折れた男の仲間は青い顔をして男の腕を固定している。
「別に?その男が死のうと私のせいじゃないでしょ?」
「は?」
何事でもないと云わんばかりに首を傾げるアリス。
「貴方が人形にしなければその男は死なずに済むんだから。それに」
「……それに?」
その間もミシミシと云いながら人形が砕けていく。
他の人形よりは元人間の人形の方が頑丈の様だ。