第17章 人形の館
連れてこられた先は広い空間だった。
「迷路四つ分の地下空間かー。暗くてあまり見えないや」
「何でそんなに落ち着いてるの!?」
アキトがアリスにしがみつく。
男達は退路を塞ぐために入ってきた入り口に四人一列で並ぶ。
天井や足元に転がるのは人形のパーツ。
それも十や百の単位ではないほど夥しい数だ。
暗すぎて奥までは見渡せない。
コツ…コツ
「おっ館の主様のご登場かな?」
「だからなんでそんなに落ち着いてるの姉さん!?」
前方からする足音に気付き其方を向く。
「ようこそ、私の人形ハウスヘ」
「あー……売り子の。貴方が自ら欲しい子供を彼処で選別してたのか」
「うふふふふふふ……その通ーり!」
売り子の時は完全に男だったその人物は
「「オカマだったんだね」」
派手なドレス、派手な化粧をしている。
「まあ失礼ね!オカマじゃないわ!心と身体の性別が違うだけよ!」
「……成る程。そのために大金が要るのか」
「「!?」」
アリスの言葉に反応する男とアキト。
「『女』の美は底無しだもんねえ」
「そうなのよ!矢っ張り女は話が判るわねっ」
「……姉さんどういうこと?」
「性転換の手術でもしたいんじゃない?でも日本じゃ無理だから異国でする必要がある。ってことはそれほどに大金が要るってこと」
「………あの会話だけでそこまで判るようになるにはどうしたらいい?」
「増やす必要があるのは知識と情報だよ。でもアキトに先ず必要なのは何事にも動じない精神力を養うことだね」
「うぅ……」
それでもクスクス笑うアリスにしがみつくのは止めなかった。
「可愛い坊やなこと。でも女の子に庇われるなんて情けないわ」
「偶には良いの。おじさんには関係無いでしょ」
ピクリ
男の口許が歪む。
入り口に居た男たちが慌てたように騒ぎ出す。
「あー。禁句だった?御免なさいね。私を子供扱いした仕返しだったんだけど」
「何処から如何見たって餓鬼じゃない」
「そりゃーおじさん達と比べられたら餓鬼かもしれないけど。私、この子よりも7つ程歳上だからそこまで若くもないし」
………。
「は?」
部屋にいる凡ての敵対者がポカンとしている。
無理もない話だが。